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第11話

「音稀です。涼風 音稀」 「音稀くんか、いい名前だね。つか俺の名字と似てね? 時任(ときとう)音稀(とき)って」 「ふふ。そうですね、僕もそう思ってました」  やっぱマジ可愛い。これ男でもいんじゃね。今この場には俺と音稀しかいねえ、この際アイデンティティなど無視しろよと自分に言い聞かす。  ドアから顔をのぞかせたときも感じたが、音稀は俺が目を合わせると少しうつむき頬を染める。もしや俺にひと目惚れでもしたんじゃねえのと都合よく取ってみる。  これは強引に押せば落とせるかもと、相手の迷惑など考えずに迫ってみた。 「音稀くんてマジ可愛いね。彼女とかいないの?」 「はい。僕すごく人見知りをする性質(たち)なので、これまで恋人などいた試しがありません。だから友人と呼べるひともいないですし、特に女子は苦手──」 「じゃあさ、俺が恋人に名乗り上げようかな。音稀って呼んでいい?」 「えっ──んんっ……っ」  有無を言わさず口唇を奪う。得意の先制攻撃で、まずは身体から陥落させてやれと行動に移す。どうみても音稀は童貞だろ、快感を与えてやりゃ後はこっちのもんだ。  それ以前にふつう男にキスされたら気持ち悪いだろとかすっぱ抜けた俺の脳内は、つぎはどうしてやろうかと音稀を攻略することだけにしか働かない。  だからすぐそこまで危険が迫っているなど気がつかなかった。はやく逃げなきゃと思った尻から欲望に忠実な俺の思考は、”男とのセックスってどうすんだ”の一点に集中。  抵抗しねえとこからすると、音稀も満更でもねえよなと俺調子に乗る。背中に腕をまわし口ンなかに舌をねじ込みながら、ソファに押し倒して片手で服を脱がしにかかる。

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