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第16話

 子供の養育権はよほどのことがない限り女の許にいく。これマジで日本の法律がクソだっつー部分だ、俺には両親も居んだから育てられるっつうの。  だが半年以上の子育て実績がない父親には法律も調停員も冷てえ。マジ鬼じゃん、潔く諦めてやるよ。そんかーし好きな時に面会する権利だけはゲットさせてもらう。  残すは財産だが─── 「なあお袋、俺の通帳ちょっと見してくんね」  つか母親にお伺いを立てなきゃ自分の貯金通帳も満足に確認できねえとか。  マジ俺だせえの。俺に持たせてたら馬鹿みてえに使うからって、没収されたまま一度も返してくんねえし見せてもくれねえの。くそ。 「あんた、また女に貢ぐんじゃないの。駄目よ」 「はあ? ンな訳きゃねえじゃん。つかてめえの息子どんな目で見てんだよ。嫁との財産分与とかあるだろ、ちょっと確認しときてーんだって」  はあとかため息ついてんじゃねえよ、傷つくだろ。俺どんだけ信用ねえんだよ。我が母親ながら他人な気がしてきたぞ、女ってみんなそうなのか。地味にへこむわ。  ぶちぶち文句を言いながらも通帳を取ってきてくれると、「見るだけだよ。いいかい、ゼロがひとつでも減ってごらん、タダじゃおかないからね」と釘をさすことを忘れない。  俺の金じゃん。俺が稼いだんだよ、何に使おうが勝手じゃん。つか使わねえけど。けどお袋って怒ると怖ええから「うっす。すぐ返すっす」と素直に頭を下げておく。  独身だった頃から貯めていた金は──すげえ七桁半ばあるぜ。給料が出るたびお袋から一定金額を取り立てられていたもんで、いくら貯まっているか今まで知らなかった。  つかすげえな母親って。息子の未来ちゃんと考えてくれてんだ。貯まった金額を見て、初めて母親に感謝をした。なんつーか、有り難てえな。  あとは結婚してから嫁との貯蓄、共有財産──けどそれは嫁が握ってるからどんだけ溜まってるかは把握してねえ。マイホーム貯金として貯めてたけれども、ガキが生まれてからはほとんど俺が一馬力で稼ぎ貯めたもんだ。  ここはひとつ、すっきりさっぱりと折半するか。けど……それじゃあ俺が損じゃね?

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