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第36話

 もう面倒になったんで今日から留守にするとぶっちゃければ、「知ってるわよ、私たちもキャンプに参加するから。私たちは家族だもの、楽しみは共有するものでしょう」と言われひと安心。説明することなく理解してもらえた。  いや待て。なんで魔女がキャンプいくこと知ってんだ。しかも参加するってなんだよ、そのうえ私たち(・・)ってどういうことだ。  怒涛の疑問符が頭上でパレードしている。もう訳が分からん。呆然と立つ俺の背後から、音稀が申し訳なさそうに声をかけてきた。 「一将さん、ごめんなさい。たぶん僕のせいかも」 「どういうこと」 「その、ね。キャンプに誘ってくれたつぎの日、着替えとか詰める大きなバッグを実家へ取りに戻ったんです。そしたら母に旅行バッグなんてどうするのと訊かれたから……」 「喋っちゃったのか」 「……はい」  ごめんなさいと謝る音稀。がっくりと肩を落としため息をつく俺。  いや、分かってる。音稀に悪気はねえって。たんに訊かれたから答えただけだ、母親にしたってストーカーの件もあるし把握しておきたかったんだろ。  自分にそう言い聞かせ納得すると、「音稀のせいじゃねえよ。いいさ、俺はおまえと一緒ならそれで」それから「音稀の家族は俺の家族でもあるしな」とフォローしておく。  すると音稀は眉を下げながら微笑み、「ありがとう」と俺に抱きついた。  けど実際滅入る。香奈と母親にタッグを組まれりゃ、俺すんげえ居心地悪りぃ思いしなきゃなんねえよ。ああ厄介だぜ……けど音稀のために我慢だ。

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