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第57話

 やはりというか、音稀に手を引かれたどり着いたのは昼間に釣りを楽しんだ滝だった。森の道から滝の全景を見わたせるが、道の最終地点はを川の中流あたり。そこから滝までは川をたどるように上流に向け歩いていくわけだ。  そして到着したのは滝壺。頼りはスマホのライトと月明かりだけ。付近は開けていて森ンなかみてえに薄暗くはねえが、やっぱ不気味なモンは不気味だ。  これから何が始まんだとビクビクしてっと、くるりと向きを変え俺の顔を笑顔で見ながら音稀がひと言、「お待ちどおさま。一将さん。ほら、そこ」と指さし俺の視線を滝壺に誘導する。 「? は、あ?……おあっ!!?」  滝壺の縁。あと少しで転がり落ちるギリラインで横たわるモノ(・・)。どうやらアレ(・・)は……見間違いだと思いたいが、紛れもなく死体─── 「ンだよ、あれっ! マジかよ、やべえってっ!」  パニクる俺をよそに音稀が飄然とした表情と口ぶりで説明する。 「ふふ、驚きましたか? けどまだこれからですよ。一将さんはスリルがお好みのようだから、うんと楽しませてあげなくちゃと計画を練ったんです」 「計画っ!? なんだよそれ、ンなもん要るかっ。つか好みじゃねえよ、スリルなんて」 「んもう、嘘はいけませんよ。だって聞きましたもん、一将さんは浮気でしか燃えないって。つき合ってるひとを欺き、バレるかバレないかの瀬戸際に快感を覚えるのでしょう? 二股三股上等、ドロドロでズブズブな性行為に明け暮れ、えげつない画像や動画を撮りまくってコレクションするとか。それを見た、知った恋人は心を切り裂かれ、それもまた一将さんにとってはスリルという名のエッセンスなんですよね」  いやいやいや、おい待てっ。それはいくらなんでも言いすぎってか酷くねえか。まあ否定はできねえけども、今は更生もして音稀に対してはクリーンなつもりだ。  つか誰から得た情報だそれ、なんでそんな俺のゲスい過去に詳しいんだ。  これはどう考えても裏でネタを流してるやつがいるな。そしてそいつは俺を恨んでいる、考えられるやつは──多すぎてひとりに絞れねえ。つかネタ提供者はひとりでなく複数か?  これから始まろうとするハプニング・パーティーとやらも含め、脳内に浮かんだ俺の最悪な考えを音稀に訊いてみることにした。

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