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第68話

「香奈が一将をそういう目で見てるってすぐに分かった。初めて一将を紹介したとき、あんた目がギラギラしてたもの。ああ、これは狙ってるなって。私たちの結婚式でもやらかしてくれたしね。二次会のときのこと、私は生涯忘れない──」  慶子が銃口を香奈に向けると能面みてえなツラして鬱憤を並べていく。  デキ婚とはいえ結婚式当日は俺もテンパっていて、人生の晴れ舞台だ慶子と腹の子は俺が幸せにしてやるぜ──なんて、そんなことばっか考えていた。  だから周りに気を遣ってる余裕などなかったし、いくら女好きな俺でも嫁友の視線など気づくわけがない。だがそんときゃ慶子は香奈の考えなどお見通しだったわけだ。  二次会ンときは俺も来てくれたダチも呑めや歌えで出来上がっていて、そんときの記憶は曖昧なんだよな。慶子が言うには香奈は俺のとなりにわざと座り、酔ったふりをして俺に甘えまくっていたそうだ。  酔った俺は女に絡まれ調子に乗ったそうだが、思いだしたくもないと慶子は俺が何をしたのか話してはくれなかった。つか凡そ見当がつくけどな。記憶なくてマジ助かった。ナイスそんときの俺!  ンで第二ラウンド、香奈の奪略女伝説だ。  生粋の男好き。しかも知り合いの野郎を奪うことでしか欲望が満たせねえ魔女だ、慶子含め女どもは香奈を危険人物として警戒していたそうだ。  けど結婚から一年ほどは俺もおとなしかった。せっせと金を稼ぎ嫁に運ぶことが、夫として親父としての使命だと思ってたからよ。責任重大だ。  だが第二子を妊娠したあたりで、レスがつづきとうとう我慢ができなくなっちまったんだな、これが。で、お約束の魔が差したっつー程度の浮気、からのグダグダの不倫。  こう言っちゃなんだが俺は結構モテる。だから女には不自由しなかった。残業だ出張だと嘘をつき浮気三昧、そのうち家に帰らなくなった。まあ俺は屑だ、それは認める。  そうこうしてるうちに嫁の腹は大きくなって、そこで登場が味方ヅラした香奈だ。こいつは下手な奪略なんてしねえ、まずは相手の家庭を壊すところから計画は始まる。

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