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第71話

「僕というわけです」  慶子のとなりに立つ音稀が澄まし顔で言う。 「はっ!? なんだよ、それっ」  いや、流れからしてそうかなとは思ったが、一応までに衝撃を受けておいた。ブルった香奈は弟の裏切りと姉を嵌めたことにショックを受けたのか、目を見開き口を震わせている。  慶子の話を受け継ぎ音稀が語りだす。 「慶子さんは姉さんと友達とあって、学生時はよく(うち)へ遊びにきていました。それで僕も面識を持つうちに仲良くなりました。 あるとき慶子さんから”姉が彼氏を狙っているかもしれない”と相談を受け、もとより嫌と姉の腐りきった性格を知っている僕は逐一姉の様子を慶子さんに報告するようになりました。 奪略の虫が疼きだすと姉はあからさまに生き生きとしますからね、現時点で浮かれ始めたとすれば一将さんと浮気を始めたと思ってまず間違いない。ですが──」 「やはりというか浮かれ始めたので慶子さんに報告しましたが、ショックを受けたのは僕のほうでした」と話す音稀の表情が、香奈に向けられ憎しみに歪んでいく。  俺と香奈が浮気をしている、間違いないと姉の様子から悟り慶子にチクった音稀だったが、まさか逆に「音稀くんの恋人にターゲットを変えたかも」と言われ混乱。  当時、慶子はハーフタイムでパートに出ていたが、その帰りに香奈と音稀の彼氏が仲良く歩いているのを見かけたそうだ。ちなみに彼氏とはストーカー野郎な。  そっからは事態が急展開、音稀自身も彼氏と姉貴がそういう関係(・・・・・・)だと自分の目で確認、浮気は許せない別れてからやってくれと切り出すまえに彼氏から「女のほうがいい」と別れを切り出されちまう。  失意のどん底に叩き落され、実の姉に恋人を奪われるというふざけた展開に魂を抜かれた音稀。そのうえ香奈に捨てられた彼氏が復縁を求めてきてストーカー化だ。  大学にもいけず引きこもりになった音稀に対し、今度こそ俺をターゲットに決めた香奈の思惑に気づいた慶子は「地獄に叩き落してやろう」と今回の計画を持ちかけたそうだ。

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