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第8話

 この蓮花という客、店でも一二を争う高額散財客であり、初めて遥希についた極太客でもある。歳は四十代と遥希とは二十近く差があるが、見た目も若々しく中々の美人。  IT企業の社長夫人というだけあって、金遣いの豪胆さで一気に遥希はナンバーツーになった。もちろん未だ清い関係を通しているが、そろそろ蓮花のほうはブレーキが緩んできているようだ。  なので遥希の気を惹こうと店に金を落とし、貢物攻撃と色仕掛けで迫っているわけだ。  だがそこはスマートな営業を一貫とする遥希。見え透いた遠慮も慇懃な感謝もせずいたって普通に接し、高額な贈り物も顔色ひとつ変えずに受け取る。  あとはソファでの接客で蓮花の官能をくすぐり、言葉巧みにオーガニズムに導いてやるのだ。直接的な局部の刺激を与えなくとも、言葉のセックスで遥希は女性を達かせてしまう。  とろりとしな垂れかかる蓮花を最後に柔く腕に包むと、「今日も可愛かった」と蜜言を鼓膜に響かせ、あごに指をかけ深く口づけてやるのだった。

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