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第7話

 それぞれボックス席はふたりだけの空間をつくるため低めの仕切りがされているが、遥希がやってきたのはVIP席といい半個室となるような席だった。  これは店にふたつしかないカーテンが引かれた席で、一か月で平均百万以上を落とす極太客に特別待遇として通す席だ。  ちなみにVIP席に通される太客の殆どは代表が目当てで来店し、ナンバーワンである先輩の龍哉がふたり抱え、遥希はひとりだが永久指名客のエースとして金を落としてくれる。  遥希の蜜言に気をよくした蓮花が嬉しそうに話す。 「今日はね、遥希にプレゼントを持ってきたの」 「僕に? ありがとう、嬉しいよ」  ソファに置かれたペーパーバッグから包みを取り出すと、嬉々として蓮花はそれを遥希に手渡す。「開けてみて」と瞳を輝かせる蓮花、遥希は「何かな」と頬を緩めて包みを解く。  二十センチ四方の箱。ふたを開ければ「PATEK PHILIPPE」と刻印された艶出しの木製ケース、ケースロックを外せば上品な腕時計がすがたを見せる。 「これ──」 「うふふ。そうよ、このまえデートしたとき、遥希この時計を見ていたでしょう」 「ああ、確かにね。憶えてくれてたんだ、嬉しいよ。ありがとう、大切にする」  メタルバンドを緩め腕に通すと、「似合うかい?」と蓮花に振る。彼女は破顔して「ええ、とっても」と至上の喜びを味わうのだった。  ある意味ホストに貢ぐのは女性客にとってのステイタスだ。どれだけ多額の贈り物をしているか、店の売り上げに貢献できているかで価値が決まる。  同じホストを共有しているとはいえ、個人としては一対一のつき合い。他客に張りあい牽制をして勝ち抜くには、目に見える資金の豊富さでアピールするしかない。  高額な酒をキープするのは当然だが、飲むというよりテーブルの見栄えを重視した飾りボトルに散財したり、指名ホストに花を持たせてやるためシャンパンタワーを注文するのも効果的だ。

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