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第11話

 ふっ──と表情を柔く緩め高峻の問いに返す。 「ふふ。なにそれってヤキモチ? 代表も極太(上客)にやってるじゃない。今日は蓮花がルイをキープしてくれたから、席を立ち辛くって。それでかなり杏子を待たせてしまったからね。少しくらいはサービスしておかなきゃ逃げられちゃう」  ルイとはブランデーの王様とも言われ、ルイ十三世の価格は一本で百万をくだらない。ちなみにシャンペンのプラチナ・ドン・ペリニヨンで八十万内外、リシャールだと百五十万近い値だ。  少しふて腐れたような少年の表情を浮かべ高峻が話す。 「ふたりのときは名前で呼べって言っているだろう。まあ過去には俺も色々とやってきたから人のことは言えないが──それでも大切な子に関しては嫉妬もしたくなるさ」  見た目は三十代だが高峻は今年で四十一歳。不惑の男が上目づかいで「妬くくらいはいいだろう?」と拗ねてみせる。  それに対し遥希は「やれやれ面倒なほうか」と彼の駆け引きを酌み、「構いませんよ。寧ろ光栄です」と目を細めて蜜言をささやき、高峻の口唇を軽くついばみ機嫌を取るのだった。

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