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第14話
営業後のミーティングという名のスキンシップを終えた遥希は、キャストたちの退けた更衣室でひと足遅れて帰り支度を済ませていた。
そこへドアが開き先輩ホストである龍哉 がすがたを現す。
「よう。遅かったじゃねえか」
細身のスーツからラフな私服に着替える遥希の白い肌に視線を這わせながら、龍哉は意味深長な言葉を投げかけてくる。
「……今日の売り上げについて、代表と話しが長引いていたので」
「ふーん」
圧倒的な存在感。低くて心地の良い声と男らしい顔立ち、逞しい長躯のボディーはスーツのうえからでもフェロモンがただよう。堂々たる王者のようなカリスマ的魅力は、ナンバーワンとして君臨するに相応しい。
遥希の曖昧な誤魔化しに、やはり龍哉は意味深長な表情と返しをするのだった。
キャスト同士の恋愛は禁止とする代表の方針だが、けれど男しか勤務しない店で色恋沙汰もないと一般的には思われるだろう。しかしこの 業界は嗜好もそれぞれ、誰もがヘテロセクシャル ではない。
ホモセクシャル もいれば遥希のようにバイセクシャル も存在するのだ、秩序を乱さず客との接客に従事するための必要枠といえる。
とはいえ遥希と高峻は恋人ではないが肉体関係にあり、それは一部の者以外にはトップシークレットとなっている。経営者が自ら方針を破るなどもっての外。
当然ながら龍哉にも秘密にしているのだが……、彼の様子からするとすでに気づかれているかもしれない。スーツをカバーにしまいながら、遥希は龍哉の出方をうかがう。
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