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第18話

 2  遥希が危惧した心の予言は見事に的中し、結局は就眠することができたのは太陽が昇りきってから。それまで何度も意識が飛びそうになったものの、その度に強引な龍哉の寝技に翻弄され堪ったものではない遥希。  貴重な午後の時間を睡眠に取られてしまった遥希、目覚めるなりとなりで眠る幸せそうな龍哉の寝顔を見て腹が立ちビンタをひとつ。  何事かと寝起きの働かない頭を混乱させる龍哉。ジンジンと痺れる頬を手で覆いながら「おはよう」と暢気に返す猛者をまえに、遥希は驚きを通りこし呆れ返るのだった。  すでに夕方だ。出勤までにできることは限られているが、数日ほど溜まった衣服を洗濯して掃除機くらいはかけておきたい。  ゆっくりと湯船にも浸かりたいし、そうなれば龍哉に長居されては予定が狂ってしまう。早々に叩きださなくてはとベッドから降りると、遥希は「さっさと帰って下さい」と冷たく言い龍哉を追い出しにかかる。 「ンだよ、まだいいじゃん。つかもっと優しく起こせねえのかよ、そんなカリカリしてっと男が逃げんぞ」 「逃げられ上等。よれより、どうして俺が男に逃げられなくちゃいけないのか意味が分かりません。もっとも俺は、龍哉さんに逃げられるのであれば本望ですが」 「夕飯つくるので、食べたらとっとと帰って」と更に追撃する遥希。地味に傷ついた龍哉は「ちっ。わかったよ」と頭から耳を垂らして拗ねるのだった。  冷蔵庫にあるもので夕食の支度をすると、遥希と龍哉はテーブルをはさみ食事をする。お茶を飲み「ごっそさん。旨かった」と龍哉が腹をさすったところで、当初の宣言通り遥希は無言で(いとま)の催促にかかった。

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