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両片想い28
「俺はどんなことがあっても、鉄平と別れない。将来何かがあって、両親と鉄平のどちらかを選ぶ運命になったら、親を捨てることになるけど、迷わずに鉄平を選ぶ」
断言する言葉を吐いた壮馬をじっと見つめながら、考えを払いのけるように首を横に振った。
「そんなの駄目に決まってる。お前は知らないんだ。捨てられた家族の気持ちを。見捨てられた相手の気持ちを知らないから、無責任なことが言えるんだ!」
胸を撫でる壮馬の手を、ぎゅっと握りしめた。多分、痛みを感じるくらいに握りしめていると思う。
「確かに親には、これまでたくさん世話になってる。その恩を返さなきゃいけないのも分かる。だけど一度きりしかない、俺の人生なんだ。好きなヤツのそばにいて、最期まで添い遂げたいと思っちゃいけないのかよ」
熱いまなざしを注がれて告げられた言葉は、鼓膜の表面に貼りつくようにじわりと染み込む。
この言葉があれば、つらい別れがあっても生きていける。そう思えるものなのに――抗うことのできない秘めた想いが、口から零れ落ちるように衝いて出る。
「……壮馬だから好きなんだ」
嗚咽を堪えた俺の声は、とても小さなものになった。それなのに壮馬はそれを聞きとった瞬間、花が咲くように笑いかけてきた。
(どうしてくれよう。こんなに喜ばれたら、胸の内のすべてを洗いざらいにぶちまけてしまうだろ)
「そっ、壮馬の全部が、好き。真っ直ぐに、俺を愛してくれ、るところと…か」
大切な一度きりの人生に、俺のような男を選んでくれた。過去のことを知っているくせに、それでも俺を選ぶなんて、奇跡みたいな話じゃないか。
「鉄平から進んで愛の告白してるのに泣きながらするとか、せっかくの感動のシーンが台無しだろ」
握りしめる俺の手を無理やり外して、両手で荒々しく頬を潰しながら撫でまくる。間違いなく酷い顔になっているだろう。
「こっ、こら、もっと優しく、宥めてくれ、よ!」
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