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両片想い32

「ぁあっ!」  食みながらちゅくちゅく音を立てて吸い上げると、甘い吐息が漏れる。 「もっと感じて壮馬。愛してるんだ」  自分から告げることをあれだけ躊躇っていたのに、一度でも晒してしまったら、止めることができない。高まる想いのままに、溢れるように口から紡ぎ出てしまう。 「壮馬、愛してる。ンっ、愛して、るから」 「鉄平まだ足りない。たくさん言って」 「壮馬が好き、ずっと前から好きだった」  恋情を含んだまなざしで見つめられたあの日から、なぜだか気になって仕方がなかった。中学生相手にそんな感情を抱くなんて、正気の沙汰じゃない。  だけどそのわけは壮馬が俺の躰だけじゃなく、全部を愛してくれたからだろう。 「俺も鉄平が好っ」  顔の角度を変えて、壮馬の唇を塞ぐ。舌の裏側に自分の舌を差し込み、舌先を使って横に動かしてやった。 「ふぐぅっ…んぁっ」  すると壮馬も負けじと、俺の上顎に舌を滑り込ませてきた。だが俺に感じさせられているせいか、舌の動きがあまりよくない。くすぐったい程度に終わってる。 「ははっ、他にもまだまだレパートリーはあるぞ。全部試してみてから、俺がお前を掘ってやるか?」 「俺が抱かれるなんてことを、許すはずがないだろ。年寄りは黙って、そのまま横たわればいいんだ」 「まだ年寄りじゃない!」 「こめかみの傍にある髪の中に、白髪が見え隠れしてるのに?」  ぶちゅっという音とともに、こめかみに押しつけられた壮馬の唇は、苛立つ気持ちを宥めてしまうものだった。この場にそぐわないキスなのに、なぜだか気が楽になってしまう。告げられた腹立たしい言葉が、どうでもよくなった。 「坊ちゃんのせいで、苦労させられてるからな」 「鉄平の苦労を、快感に変えてあげるよ」  俺の文句もなんのその。感じやすい喉仏を食みながら、空いた手は胸元をまさぐる。 「あっ…いいっ」  焦らされた分だけ、感度が上がっているらしい。壮馬の吐き出す呼吸やちょっとざらついた唇や舌先、そして指先の小さな動きだけでも感じてしまい、腰から下が熱くてじんじんしてくる。

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