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なおしたいコト11

 そんな毎日を送りながら稜に翻弄されるせいで、散々苦労しているというのに――。 「克巳さんはことある事に、俺の早漏をどうにかしようとして、いきなり困らせるんだから。毎度毎度、困惑しまくりなんだからね!」  マンションのエレベーターを使えば、ものの数秒で到着するのに、健康維持を目指すべく昔の決まりを引き継ぎたいと、15階を目指して延々と階段を上っていた。  ほぼ誰も来ない場所。だからこそ、ここでいたしてもまったく問題ないだろうが、こんなところでヤっているのを撮影されたりしたら、革新党に迷惑をかけてしまう。 (――以前なら外だろうが玄関だろうが、そんなのを気にせず、稜に手を出していたっけ) 「克巳さんってば、俺の話をちゃんと聞いてよ!」 「きちんと聞いてる。稜のウィークポイントは、そこくらいしかないだろう。意地悪するところが少なくて、俺としては困ってるんだ」 「イジワルするって、堂々と言っちゃうところが、克巳さんらしい」  コツコツ階段を上る音と一緒に、陵の笑いを含んだ声が響く。  最後の最後まで手を抜かずに仕事をやりきり、当人は相当疲れているはずなのに、それを感じさせないような声色を聞いて、何だか寂しくなってしまった。 「陵、疲れてはいないかい?」 「克巳さんが思ってるよりは、そんなに疲れてないよ。息を切らさずにこうして階段を上れてるのが、元気の証拠だと思うけど」 「このあと俺と疲れるコトをするというのに、素直にエレベーターを使ってほしかった」 「あ~。克巳さんは俺を責めるのに、足腰使うもんね。体力温存するのに、エレベーターを使いたいはずだよ」  並んで上る階段。陵の行く手を塞ぐように、壁際に腕を突き立てた。 「わっ!?」 「ひとえに君の躰の心配をしてるんだ。俺のことなんてどうでもいい」  すると突き立てた腕を掴むなり、壁から放してぎゅっと抱きしめる。 「俺のことを、大事に思ってくれるのは嬉しい。だけど俺としては、克巳さんの躰も大事なんだ。何かあったりしたら、俺は生きてはいけないからね」 「大げさだな」  喉の奥で笑いながら微笑むと、それまで浮かべていた笑みを消し去った陵が、縋るようなまなざしで見つめる。抱きしめられたままになっている腕に、ほんのりとした痛みを感じた。

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