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抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい21
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普段夢など見ないというのに、なぜだか以前体験したことを思い返す夢を見ていた。
『お見舞いに来てくれてありがとう、ベニー』
3ヶ月ぶりにお逢いした奥様のご様子は、あまり芳しいものではなかった。青白い顔色をそのままに、ベッドに横たわるお姿があまりにも弱々しくて、涙が出そうになる。
「ここに来る途中、ローランド様にお逢いしました。以前は男爵にべったりとくっついていらっしゃったのに、今は手元で何をしておられるのか、じっと観察しながら、しっかりとお仕事をしているご様子を眺めておりました」
『ふふっ、誰かの目がなければ、甘えたに大変身するのよ。この部屋に顔を出したら、必ずベッドに潜り込んできて、ひとしきりベタベタするの。離れなさいって言っても、全然言うことをきかなくてね』
「奥様それは、ローランド様はまだお小さいですから……」
『それよりもケヴィンからの便りは、どうなっているのかしら』
悲しさを宿す瞳が、自分を射すくめた。
隠し事を見逃さないようにするためなのか、ローランドと同じエメラルドグリーンの目がしっかりと見開かれる。目力を強めてまっすぐ見つめられるだけで、息が止まりそうになった。
『ベニー、彼からの便りを私がどれだけ楽しみにしているのか、貴方なら分かっているでしょう? お願いだから、出してちょうだい』
骨ばった腕が布団から伸ばされるやいなや、両脇に控えていた手を掴む。力なく掴まれている手は簡単に振り解けるものなれど、それがどうしてもできない。
これから伝える真実があまりに残酷で、病床にいる彼女をさらに悪化させるものになるのは、容易に想像のつくことだった。
掴まれている手を両手で包み込み、床に膝をついて自分のおでこに押し当てた。
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