250 / 332

抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい74

「いい歳した大人が未成年相手に、くたくたになる状態に追い込むまで抱き潰して。そんなに弘泰の躰は良かったのか?」 「申し訳ございません……」 「早く寝かせてやれ。下で待ってる」  思いっきり顔を背けてリビングに向かう背中を見送りながら、ベニーは小さく頭を下げた。その後、慎重に階段を上り部屋に戻ると、弘泰をベッドに寝かせて布団をかぶせる。 「弘泰とは、一筋縄ではいかない付き合いをすることになるんでしょうね。前世のカルマのわざわいが絡んでいるからこそ、気を引き締めなければ」  ベニーは利き手で、弘泰の頭を撫でた。自分の中にある、波立つ気持ちを落ち着かせるように何度も撫でたあと、急いで着替え、身だしなみを整えつつ、リビングを目指す。 (私と弘泰、ふたり分のカルマを背負っているけれど、それでも頑張ることができます。この手で捕まえた恋を、絶対に逃しはしません!)  リビングに足を踏み入れた瞬間に、弘泰の父がダイニングテーブルから、ベニーに視線を投げかけて、向かい側に座るように促した。 「失礼します」  階段でのやり取りの気まずさを隠して軽く会釈をしてから、椅子に腰かける。テーブルの上には、あたたかいお茶が用意されていた。 「単刀直入に言おう。俺は弘泰の見守り人だ」 「お父さんが見守り人ですか?」 「俺は殺人を犯して死刑になり、選ばれし人間になった。おまえの見守り人とは違い、俺は選ばれし人間として生きた世界を、早々に落伍した。つらい現実の連続に辟易したんだ」 (おまえの見守り人とは違いって、もしかして先輩に直接逢って、言葉を交わしたということでしょうか。見守り人としての情報交換するためかもしれませんが……)  頭の中を素早く整理しながら、疑問に思ったことは退けておき、自分が知っている知識を口にしてみる。 「選ばれし人間の世で生きられない場合、そのまま魂を消滅させられるわけではなかったんですね」  相手は弘泰の見守り人、彼を守るために嘘の情報を与えられる恐れがあるため、ベニーは慎重に言葉を選んだ。 「俺の見守り人に相談したら、特別に扱ってやると上のヤツに言われたそうだ。気がついたら赤ん坊の弘泰とここにいた」 「特例措置の弘泰と一緒にですか……」  眉根を寄せながら冷ややかな視線を目の前に注いでみるが、ひょいと肩を竦めてやり過ごされた。

ともだちにシェアしよう!