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第11話

一二三が仕事に行ってから俺は鏡の前に立ち、パジャマを脱いだ。 「……一二三」 愛しい奴の名前を呼んでみた。 返事なんてあるわけもなくて。 そこには今朝一二三が付けたキスマークがあった。 『好き』なら、なんで真剣に言わない? 『愛してる』なら……、なんでセックスしていることを隠す? 「俺を……助けてくれ」 俺はこの新宿が好きだ。 でも生きにくい街が新宿。 捨てられる場所じゃないから……。 俺は一二三から離れられない。 俺は身体に付いているキスマークを手でたどった。 「一二三……、『愛してる』」 飯には手を付けず、水を飲んでから……俺はまたベッドに潜った。

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