30 / 40

第30話

僕はマンションの鍵開けてからスーツのジャケットを脱いだ。 ……これでやっといつものオレに戻れた。 やっぱり仕事終わりはオレでも疲れてる。 けど独歩よりは疲れてない自信はあるから、オレは彼の部屋のドアをノックした。 「どっぽー?……具合どう」 部屋は静まり返ってるみたいだ。 中を確認したら、独歩の鞄だけが部屋にあった。 少しオカシイなと思いながら、ワイシャツを洗濯しようと思って洗面所に行った。 そこにやっと人の気配がした。 「どっぽちん、風呂まで電気付けないで入るなんて。かなりのヘンジンだよぉ?」 「一二三!?入ってくるなっ」 オレは風呂場の電気を付けた。 きっと独歩は酔ってない。 もしかしたら酒……アルコールすら飲んでないだろう。 様子がやっぱりオカシイ。 「どっぽ、なんかあったの?」 「……取引先で」 オレはそこに脱ぎ散らかってる独歩の背広とワイシャツを拾い上げた。 「なにこれ……」 ワイシャツのボタンが全てついて無かった。 これは引き千切られたあとだ。 「お前が付けたキスマークを見られたら。……襲われたのか?俺は」 「なんで疑問系なのっ、独歩?!」 「……サイアクだ。俺なんてオッサンを襲うとか、ありえないありえないありえないっ!!」 オレは風呂場に入った。 中には身体を真っ赤になるまでウォッシュタオルで洗っている独歩がいた。 オレは濡れるのも構わず、その痛々しい身体を抱き締めた。 そして独歩の唇を奪った。 「……やめろ一二三」 独歩の身体は震えていた。 これじゃ彼のストレスは余計に貯まる。 「うん、やめる。でもさ、オレっちがやりきれないから、……落ち着くまで抱き締めていい?」 「しょうがない奴だな……」 やりきれないのは事実だけど、一番の理由は独歩を安心させるために。 痩せすぎの独歩を抱き締めたまま、オレはその場に座り込んだ。

ともだちにシェアしよう!