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第20話

    Lesson4 〝花〟の話術  取り越し苦労には、終わりませんでした。  つながりを保ったまま、旦那さまが胡座(あぐら)をおかきになりました。股ぐらの上にさらいとられて早々に膝の裏に手がかかり、ぱかり、と大股開きに両足が割り広げられます。  深々と刺し貫かれて、柘榴(ざくろ)のごとく熟れきった秘処があらわになれば、恥ずかしい……。 「これはこれは、蠱惑的な眺めだね。言いかえれば目の毒ではあるけれどね……」  ほうっと悩ましい吐息が、後れ毛をそよがせます。  たくましい胸に後ろ抱きに抱きくるまれるこの体位は、赤ん坊がおしっこをさせてもらうときの恰好にそっくりです。  かあっと頬が熱くなり、咄嗟に花門を掌で覆い隠そうとしますと、つっかい棒を()うかのごとく、旦那さまが両脚(りょうきゃく)の間に膝をこじ入れていらっしゃいます。  それゆえ金輪際、足を閉じることは叶いません。いやいや、と頑是なく首を打ち振れば、上顎のデコボコした部分が太カリを()ぐことになり、それがえもいわれぬ刺激を生むのでしょう。  朋貴さまが、頭の後ろに掌を添えてまいります。汗と涎にまみれました顔を、脚の付け根に押しつけておしまいになります。  唇の上下で屹立の根元を掃いてさしあげるに、やぶさかではありません。ありませんが、鼻をふさがれてしまうと呼吸(いき)が、呼吸ができません。 「は……ぐぅ……っ!」 「ああ、御免ごめん。嬌態ってやつに煽られて勢いあまった」 「いじらしいものであろう。可憐な孔が裂ける寸前にまで拡がって魔羅をずっぽりと銜え込み、可愛らしくひくついている」    卑語がツボにはまったのかもしれません。ぴゅくっ、と先走りの雫が喉を打ちます。  独特のえぐみが味わい深いその雫に舌鼓を打ちながら幹を一寸刻みに舐め下ろしていき、唇が下生えに触れますと、来た道を忠実に折り返してまいります。  掌をあてがっております太腿に、痙攣が走ります。砲塔が顎の蝶番(ちょうつがい)を打ち壊さんばかりに、いきり立ちます。  経験に照らし合わせますと、限界が近い、と訴えていらっしゃるように思います。朋貴さまが真っ先に白旗を掲げますれば、旦那さまは面目を施すということになりはしませんでしょうか?   ならば、腕の見せ所です。口淫に手技を交えるのも一興かと存じます。では、早速……。 「ん、ん、ぅん、ぐ……ん、ん、ん……」  みずみずしい股ぐらに、なおいっそう顔を埋めます。殿方の稲荷寿司をふたついっぺんに頬張りながら、砲身を両手でしごいてさしあげます。  ところが、その熱心なやりようは、あらぬ誤解を生むことにもなるのです。 「朋貴のイチモツは、そんなに美味なのか」  甘咬みというには、耳たぶを嚙む力は強ぅございます。どうなのだ、と畳みかけてこられます重ねて声が、あえかに嫉妬の響きをはらめば胸がときめきます。  いいえ、いいえ。  この身は誓って唯一、髪の毛のひと筋にいたるまで旦那さまのものです。たとえ三千世界の果てまで旅しようとも、旦那さま以上に素晴らしい方と巡り会えるはずがありません。  心の底からお慕いしておりますと縷々(るる)、綴りたい。宝珠に口をふさがれておりますために叶いません。  それゆえ、きゅうっと襞を引きしぼって返答に代えます。 「なるほど、おまえの〝花〟は饒舌(じょうぜつ)に胸のうちを物語る」    さすが、旦那さまです。舌足らずな身ぶり手ぶりの裏に隠されております真情を、いとも簡単に読み解いてくださいます。

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