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Ⅰ 恋せよ、俺!③
……「ごめんなさいっ」
魔法使いとぶつかって、慌てて頭を下げた。
急いでいるのか、俺に見向きもせずに通りすぎて行く。
魔法使いを飲み込んだ人波に、彼がいない。
遅い。
どう考えても遅い。
約束の8時を20分回った。
待ってられずに、ドアの外に出て長身の見慣れた姿を探すけれど。
街に溢れる魔女も、ゾンビも、かぼちゃお化けも、俺の探している人じゃない。
先輩が来ない。
道に迷ってる?
会社とは目と鼻の先だ。
迷子になる訳ない。
まさか仮装が嫌で逃げた?
会社で張りついて、一緒に来れば良かったかな。
いやいや、先輩はそんな人じゃない。
でも先輩から連絡がない。
どうしよう。
心配だ。
「にゃーん」
「わーッ」
口から心臓飛び出るかと思ったぞ。
「だって。結羽 が構ってくれないからさー」
「むっ」
だからって、俺の心臓飛び出したらどうするんだ。
「航雅 !」
今日は、大事な大事な……
「ハロウィンだよ」
「そ、そうだ」
危なかった。
勢いで、危うく航雅にバラしてしまうところだった。
先輩に……
「告白するって」
「そう、告白する……」
………………えっ
なんで?
「航雅が知ってんの?」
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