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プロローグ

神坂翔也(かみさかしょうや)義兄(あに)である神坂涼(かみさかりょう)への想いに気づいたのがいつなのか、日にちどころか時間さえはっきりしている。 中学3年の秋、涼の通う大学の学祭に友人と行った日のこと。 涼は映研サークルに所属しており、学生時代は毎年自主映画を作っていたが、基本的に裏方の仕事をしていた。 涼が4年のこの時も、毎年恒例のサークル仲間で作った映画に兄は裏方参加したのだと思い、翔也は何気なく14時からの上映を見ていた。その画面に魔女のコスプレをした涼の姿。男性が女装している、という設定ではなく、ハロウィンパーティをしている仲間達の中でも皆の憧れの美女、という女性の役割。 そして涼は本当に美しく妖艶な姿で、吸血鬼に首を噛まれる役を演じていた。 ラスト、吸血鬼へと変化した事を示唆するように、真っ赤な口紅をつけ正面を見据えて微笑む涼のアップで、翔也(しょうや)に変化が起こる。 欲情した。 中3のあの時にその言葉が浮かんだ訳ではなかったが、あの日あの時にはっきり自覚した。 自分は兄である涼に恋している。 兄と初めて出会ったのは9歳の頃。涼は高校生で、その頃の7歳差は大きい。しかしそうは言っても高校生は大人とは違う。自分の周囲にいた父やお手伝いさんに比べて遥かに年の近いお兄さんは、優しくてイケメンで、翔也はすぐに好きになった。 のちに母となる由美と涼と二人が遊びに来たり、あるいは外で食事したり、またある時は一緒にドライブするなど、距離を縮めながら父親は結婚のタイミングを見計らっていたのだと思う。 1年くらい過ぎた後、二人がお母さんとお兄さんになる、と聞いた時には本当に嬉しかった。 自分が成長するにつれ、兄だと紹介する事が自慢になるくらい、整った綺麗な顔をしているというのがより明確にわかってきた。 頭も良く、何を聞いてもすらすらと答えてくれる。 いつも穏やかで、感情剥き出しにするところなど見たこともない。 天然な母の由美を気にかけ、大切にしている事がわかる母親思いの優しい兄。 元々、涼のことは大好きだった。 そしてあの映画を観た日からずっと、兄である涼に恋してる。

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