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第1話
────頬を滑る指先が唇に触れるとクスリと鼻で笑われた。
「……口、開けてね」
指先が咥内に滑り込むのを感覚で悟る。
「上手、上手……ちゃんと舐めるんだよ?」
戸惑いながらも小さく頷くとそれがゆっくりと引き抜かれた。
「じゃあ、これ以上はまた後でね……」
そう告げた男が再びグラスを手にして琥珀色の液体を飲み干し、俺の前にそれを置く。
「ハロウィンだからちょっとぐらいいいよね……」
絡まれた指先が冷たい。
だけど、それ以上に俺の身体は熱かった。
数時間前に会ったばかりで何も知らないはずなのに……何故か抗えない。
ハロウィンだから、
酒が入ってるから、
だからと無理矢理理由付けていると名前を呼ばれた。
「まーくん?」
低く掠れた甘い声が耳元に響くと身体の熱が再び上がり、思考がバラバラになっていく。
「まだ身体、熱いね。冷ましに行こうか」
続けざまにそう誘われ、絡まれた指先に力が入り、
「円果 ……おいで?」
引き寄せられながらまた名前を呼ばれると俺の思考は完全にストップして、
何かが崩れる音が脳内を支配していった……
~Witching hour~
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