1 / 7
第1話
画面の中でにこやかに微笑むポールの垂れ下がった目尻は、彼をいかにも善良でやさしそうな人に見せているけれど、その笑顔の裏にはいつも何かを隠し持っているような気がして、あまり信用できない。
目は口ほどに物を言う、っていうのは本当にその通りだと思う。どのポールのことを言っているのかは、ナイショだけどね。
昨日はバイトがなかったから、午後の講義が終わった後に一旦、自分のアパートへ帰って用事を済ませ、それから仕事が終わった後の彼と待ち合わせて一緒にここへ、和彦さんのマンションへ帰ってきた。
僕らの好きなこと。それは、セックスした後にいつまでも2人でベッドに寝転がったまま、ゴロゴロとじゃれあうこと。サイドテーブルに置いたペットボトルを手に取り、中の水を一口、口に含んだら彼の頬を両手で包み、ゆっくりと口移しで飲ませてあげる。
それを「もう1回?」と確かめながら、2回か3回繰り返す。した後は喉が渇くから。僕のその行為を、彼はとても気に入っている。
それからはまた、ベッドに体を横たえて、背中から彼に抱きしめられながら、どうでもいい話をしてイチャイチャしているうちに眠りにつく。ここで過ごす週末の夜は、だいたいそんな感じ。
昨日の夜は何を話してたっけ。たしか……、
「ねぇ。生理中の女の人とセックスしたことある?」
「はぁ? ないよ」
「最近じゃなくて、僕と付き合う前とか、ずっと昔にさかのぼって」
「ない」
「いいよ、隠さなくて。怒んないから」
「隠してないし、本当にしたことないって。なんでまたそんな話を」
「今日、学食で隣に座った人が話してるのが聞こえたんだけど、女の人って、生理の時っていつもより感度がイイんだって。それ、本当なのかなぁ。男の体はそういう仕組みになってないのかな」
「なんで……?」
「そしたら、その時はいつもよりもっと気持ちいいわけでしょ?」
「……そぅ、だねぇ」
「いいなぁ。そういうの」
「どうかな……」
「そう思わない?」
「……別に」
確かそのあたりで、彼が話すのをやめた。さっきまでしゃべっていた唇が襟足のあたりをついばみはじめ、あん、なんて気分よくなっているうちに、ザラリとした舌が首筋を舐めはじめた。
彼が僕にすることのひとつひとつ。そのあまりの気持ちよさに声を上げずにいられない。彼が僕の身体に体重をかけるたびに、ベッドがミシッ、ギシッと鳴く。まるで僕らを煽るように。
こういう時は、「もう一回、する?」なんていちいち確かめる必要はない。ないんだけど、僕らが気持ちよくなるためにあえて口にする。
「ねぇ、和彦さ、ん」
「ん?」
「さっきみたいに、気持ちよく、して」
ともだちにシェアしよう!