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第1話

   画面の中でにこやかに微笑むポールの垂れ下がった目尻は、彼をいかにも善良でやさしそうな人に見せているけれど、その笑顔の裏にはいつも何かを隠し持っているような気がして、あまり信用できない。  目は口ほどに物を言う、っていうのは本当にその通りだと思う。どのポールのことを言っているのかは、ナイショだけどね。  昨日はバイトがなかったから、午後の講義が終わった後に一旦、自分のアパートへ帰って用事を済ませ、それから仕事が終わった後の彼と待ち合わせて一緒にここへ、和彦さんのマンションへ帰ってきた。  僕らの好きなこと。それは、セックスした後にいつまでも2人でベッドに寝転がったまま、ゴロゴロとじゃれあうこと。サイドテーブルに置いたペットボトルを手に取り、中の水を一口、口に含んだら彼の頬を両手で包み、ゆっくりと口移しで飲ませてあげる。  それを「もう1回?」と確かめながら、2回か3回繰り返す。した後は喉が渇くから。僕のその行為を、彼はとても気に入っている。  それからはまた、ベッドに体を横たえて、背中から彼に抱きしめられながら、どうでもいい話をしてイチャイチャしているうちに眠りにつく。ここで過ごす週末の夜は、だいたいそんな感じ。  昨日の夜は何を話してたっけ。たしか……、 「ねぇ。生理中の女の人とセックスしたことある?」 「はぁ? ないよ」 「最近じゃなくて、僕と付き合う前とか、ずっと昔にさかのぼって」 「ない」 「いいよ、隠さなくて。怒んないから」 「隠してないし、本当にしたことないって。なんでまたそんな話を」 「今日、学食で隣に座った人が話してるのが聞こえたんだけど、女の人って、生理の時っていつもより感度がイイんだって。それ、本当なのかなぁ。男の体はそういう仕組みになってないのかな」 「なんで……?」 「そしたら、その時はいつもよりもっと気持ちいいわけでしょ?」 「……そぅ、だねぇ」 「いいなぁ。そういうの」 「どうかな……」 「そう思わない?」 「……別に」  確かそのあたりで、彼が話すのをやめた。さっきまでしゃべっていた唇が襟足のあたりをついばみはじめ、あん、なんて気分よくなっているうちに、ザラリとした舌が首筋を舐めはじめた。  彼が僕にすることのひとつひとつ。そのあまりの気持ちよさに声を上げずにいられない。彼が僕の身体に体重をかけるたびに、ベッドがミシッ、ギシッと鳴く。まるで僕らを煽るように。  こういう時は、「もう一回、する?」なんていちいち確かめる必要はない。ないんだけど、僕らが気持ちよくなるためにあえて口にする。 「ねぇ、和彦さ、ん」 「ん?」 「さっきみたいに、気持ちよく、して」

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