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平凡とは

──……  よくいるじゃん、平凡な雰囲気だけど、よく見れば顔は可愛い、とか。  そういうのじゃないんだよ、俺は。  本当に、普通に普通の男。  その上、性格もそれほど癖がないらしく、あまり他人の記憶にも残らないようで。  こちらは覚えているのに、あっちは俺の存在を忘れている、もしくは、良くて『うろ覚え』なことが多々あった。  そのくらい平凡。 ……なのに紫乃は、なんで飽きずに、毎回俺のいる屋上へ来るのだろうか。  まあそんなしょうもないことを考えても仕方ないなと思って、ポケットに入っていた飴を口に放り込んだ。 ──あ……、しまった。  アップルパイ買ってたのに先に飴を食べちゃった。  でもレジ袋に入っているから、あとでいいや。  口の中で転がした飴は、数日前に紫乃にもらったまま、制服に入れっぱなしだったやつ。  少し酸味があるけど、甘い。  人工的で安っぽい味だけど、これはこれで普通に美味しい。  でも何味なのか、着色料や香料ばっかで全く分からん。  レモンやオレンジではないな……。  もも?それか、ぶどう?  あ、りんご……か?うん、りんごっぽい。  一度そう思ってしまうと、そうとしか思えない。  しかし袋には『???味』しか書いていないから、答え合わせのしようがない。  鼻呼吸でハスハスしながら香りを感じていると、突如として、ギィ、と鈍い重厚な音を立てて扉があいた。

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