6 / 16
平凡とは
──……
よくいるじゃん、平凡な雰囲気だけど、よく見れば顔は可愛い、とか。
そういうのじゃないんだよ、俺は。
本当に、普通に普通の男。
その上、性格もそれほど癖がないらしく、あまり他人の記憶にも残らないようで。
こちらは覚えているのに、あっちは俺の存在を忘れている、もしくは、良くて『うろ覚え』なことが多々あった。
そのくらい平凡。
……なのに紫乃は、なんで飽きずに、毎回俺のいる屋上へ来るのだろうか。
まあそんなしょうもないことを考えても仕方ないなと思って、ポケットに入っていた飴を口に放り込んだ。
──あ……、しまった。
アップルパイ買ってたのに先に飴を食べちゃった。
でもレジ袋に入っているから、あとでいいや。
口の中で転がした飴は、数日前に紫乃にもらったまま、制服に入れっぱなしだったやつ。
少し酸味があるけど、甘い。
人工的で安っぽい味だけど、これはこれで普通に美味しい。
でも何味なのか、着色料や香料ばっかで全く分からん。
レモンやオレンジではないな……。
もも?それか、ぶどう?
あ、りんご……か?うん、りんごっぽい。
一度そう思ってしまうと、そうとしか思えない。
しかし袋には『???味』しか書いていないから、答え合わせのしようがない。
鼻呼吸でハスハスしながら香りを感じていると、突如として、ギィ、と鈍い重厚な音を立てて扉があいた。
ともだちにシェアしよう!