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第0話

 どうしても手にしたい。どうしても欲しい……そんな感情が自分にもあるなんて知らなかった。  いつだって親の敷かれたレールを歩き、逸れる事を恐れ否定もしない。  仕事もプライベートも全て把握され、言われた通りの毎日。  つまらない日々。辛い日々。  でも、幼い頃から自分の意思を持つ事を許されなかった自分に、それから逃れる術など何も浮かぶ事は無く大人になった。  手を伸ばせば届く所にいるのに伸ばす事さえ堰き止めて、グッと心の中で堪える俺に、彼は何も言わずただ側にいてくれる。  気持ちは同じなのに……。 「おはようございます」 「……おはよう」  蓋をしたそれが外れないように、俺はまた彼の前でも我慢する。そして、また笑いの無い日々を過ごす。  それが俺の人生……叶わぬ事のない恋心。

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