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第終話

 要が海斗を連れて行ったのは、都内でも最高級なホテルだった。  いや、ホテルのような綺麗なマンションで、それは初めて来た要の家だった。 「ンッ……要……アッ!」  マンションに着くと、玄関先で激しいキスをされた海斗は、その初めてのキスに腰が抜け、力も抜ける。  そんな海斗の腰を、要がガッシリと掴み隙間無く身体を密着させた。  そして、唇が離れると、海斗はプハッと空気を吸い、苦しかった息を整えた。  すると、そんな海斗の姿に要は嬉しそうにしているのが分かった。 「あの女と……キスもした事ないんだって?」  それが理由のようだ。 「うん……した事ないよ……。でもなんで……?」 「知ってるかって? あの女、俺に逐一言って来てたからな……あと、誘いも何回もあった……」 「! そ、そうだったの!?」 「あぁ。でも、そんな誘い乗るわけも無いからもう無くなったけど……」 「そ、そうだったんだ……」  やっぱりそんな事があったんだ。  彼女が要に色目を使っているかもしれないとは思っていたが、実際にあったとは知らなかった。一度も抱こうとはしない海斗に飽きれ、顔も仕事もできる要に近付こうとしたのかもしれない。 「でも……お前があの女とキスもセ◯クスもしてないって知ってても……お前の身体からあの女の香水が臭う度いつも心が氷みたいに冷たくなった……。今も……」 「ンンッ……」 「微かにあの女の匂いがする……」 「アッ、そんな所……ハムハムしないで……っ」  要は嫉妬で狂ったのか、海斗の首元を重点的に舐めると、そこを強く噛み痕を残していった。  その痛みと擽ったさに、海斗は頭がおかしくなりそうで、でも、要にされる事全てが嬉しくて、もっと……と強請った。  すると、要は海斗の身体をヒョイっと担ぐと寝室へと軽々と連れて行き、ベッドの上へと海斗を置いた。そして、仰向けになる海斗に覆い被さりこう聞いてくる。 「もう一度聞く……俺と一緒になってくれるか?」  それはまるでプロポーズ。  叶わぬと思っていた事が叶った瞬間だった。 「悪戯してくれるんでしょ……?」 「え? あ、あぁ……」 「なら、責任とってよ……ずっと……」  お菓子渡してないから。いや、渡す気さえもないから……責任を取って。  海斗は嬉しそうに照れる要にそう告げた。 「要になら何されても良い……」 「海斗……」 「お菓子は絶対に渡さない……。だから……たくさん俺に悪戯して……一生…側にいて……」  そして、そう照れながら海斗は要に言ったのだった。  すると、要の顔は今まで見た事が無いほどタコのように真っ赤に染まり、海斗の身体を強く抱き締めると、何度も頷いてくれたのだった。 「二人なら幸せになれるよ……いや、幸せにする……後悔はさせない……」 「ふはっ。大丈夫……要と一緒なら後悔なんかしないから……」  手を伸ばしたら届く距離。でも、伸ばす事をずっと諦めていた。  けれど、今はほら、その身体に触れている。抱き締められている。  それだけで心は満たされる。 「愛してる……要」  何もかも捨てられるほど愛してる。 「俺も愛してる……海斗」 「ンッ…アッ……ぁ……」  海斗はこの日、全てを捨てて恋人と共に生きる道を選んだ。それは、生まれて初めて自分で決めた事だった。  そして、要も職を捨て恋人と共に生きる道を選んでくれて、ハロウィンは、海斗と要にとって大切な記念日へとなったのだった。

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