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秘密の放課後

「えー、いいじゃん、男同士なんだから」 「いくら男同士でも、わざわざ見せたりしねーだろ!」 「する人もいるよ」 「お、れ、は、い、や、だ!」 真山はちぇっと唇を尖らせた。 「じゃあ、今日は膝までで我慢する」 真山はそう言って、俺の脚を食い入るように見つめた。 それから、そろりと、すねに指を這わせる。 すらりと長くて、節ばった指。男っぽくてかっこいいな、と思う。 半袖から出た腕も、適度に筋肉がついていて、動かすたびに筋が浮かび上がって、妙に色気がある。 ぼさぼさ頭のもさい男なのに、身体はかっこいいなんて、詐欺だ。 いや、顔もそれなりに、……実は意外と、……いや結構、まあまあかっこいい―― 「深見?」 すこし怪訝そうな真山の声で、自分が彼の顔を凝視していたことに気づいて、思わず「ふぇっ」と変な声を上げてしまった。 なに考えてたんだ、俺。 真山のことかっこいいとか。こんなただの変態変人に? でも、やっぱり今も思ってしまう。 もさい髪の間から覗く奥二重の切れ長な瞳とか、きりっとした眉とか、男らしい輪郭とか、女顔の俺からしたら理想形みたいな真山の顔。 たぶん、ちゃんと見た目に気をつかったら、こいつかなり垢抜けてモテちゃうんじゃないか。 そう考えて、胸の中で急激にもやもやが膨れ上がった。 女からキャーキャー言われるこいつなんて、見たくない。 こんな変態、俺だけ見てればいいんだ。俺にだけ夢中になってれば―― 「深見、どうしたの?」 また、はっと我に返る。 なんで俺、こんなに真山のことばっかり考えてんだ。 俺はこいつの変態趣味に付き合ってやってるだけで……。 そのとき、真山が突然、俺の顔に手を伸ばしてきた。 何をするのかと思ったら、むにっと唇をつままれた。 「……っ、何すんだよ!」 驚いて手を跳ねのけると、真山はへらりと笑って「ごめん」と言った。 「なんか唇尖らせて、いじけた顔してたから」 「……!?」 絶句する、とはことのことか。 俺は口をぱくぱくさせたあと、かろうじて言葉を絞り出す。 「いっ、いじけた顔!? してねーよ!」 「してたよ。可愛かったよ」 「か……っ、わいかったとか言われても、全然嬉しくないんだよ!」 「別に喜ばせようと思ったわけじゃなくて、思ったこと言っただけだよ」 そうだ、こいつはこういうやつだった。 思ったことをなんでも素直すぎるくらいに口に出すのだ。

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