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階段下
◇
その日以来、俺と真山は放課後を共に過ごすようになった。
待ち合わせ場所は、天文部の部室。
特別教室ばかりが並ぶ校舎の東側は、放課後になると誰も寄りつかない、まるで学校の中の異世界みたいに静かな場所だ。
その一階のいちばん奥、薄暗い階段下の空間に壁を作って閉じて鉄の扉をつけただけの粗末な部屋が天文部の部室だった。
普通なら勝手に部室に入り浸るなんてだめだと思いとどまるところだが、活動したこともないくせに『一応天文部に所属してるんだから部室に入るくらい許されるだろう』と自分に言い訳していた。
窓もない物置みたいな狭い部屋で、かさもない小さな電球の明かりだけをつけて、埃っぽいにおいの中、鍵をしっかりとかけて閉じこもる。
二人だけの陰気な空間で、俺は真山にほくろを触らせる。
真山は何度触っても飽きることなく、あの日と同じように、興奮を隠しきれない様子で俺に触れる。
「ねえ、今日は、脚のほくろが見たい」
真山が真剣な目つきで訴えてきた。
なんでだろう、脚を見せるのは腕より数倍恥ずかしい。
でも、俺は黙ってズボンの裾をめくった。
くるぶしが見えた瞬間、真山がごくりと喉を鳴らす。
指が伸びてきて、足首にあるほくろに触れた。
また、びりっと電流が走る。
なぜか下半身に血が集まる感じがして、俺は慌てて気を逸らそうと口を開いた。
「……お前って、ほくろフェチなの?」
真山は目を見開いて俺の脚をそろそろ撫でながら答える。
「違うよ。触りたいと思うのは、深見のほくろだけ……」
なんだそれ、と嘲笑って一蹴しようとしたのに、俺の声は変に上ずってかすれていた。
「深見って、毛、うすいんだね……」
気にしていたことを指摘されて、少しむっとする。
俺はもともと体毛が薄くて、腕はほとんど毛が生えていないし、脚も下手な女子より薄いくらいだ。
そのせいで肌の白さも際立つし、ほくろも目立ってしまうし、すごく嫌だった。
でも、真山はからかうような口調ではなく、ただ事実を述べているだけという言い方だったので、胸が痛むことはなかった。
「まあ、家系的にあんまり生えないんだ」
「そうなんだ。……上も?」
上ってなんのことだろう、と思っていると、真山の視線が足首からふくらはぎ、太もも、そして脚の付け根へと上がってきたので、何を言っているのか分かってしまった。
まっすぐすぎる眼差しに貫かれて、意識を逸らして散らしていたはずの血が、一気に下半身に集まってきた。
腹の奥がどくどくと脈うつように熱くなる。
「……ね、見ていい?」
真山が懇願するように上目遣いで問いかけてくる。
「ば……っ、だめに決まってんだろ!」
顔が真っ赤になっているのを自覚しながら、俺は真山の肩を小突いた。
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