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【23】「世界で一番幸せだと白状したのさ。」
「一度も外したことのないと言ったお前の予想は的中したぞ。」
「うん?何だって?」
何一つない錦には何かを求める権利はない。
蔑ずみは結果であり、冷眼を向けられるのは義務なのだ。
耐えるのも、課せられた罪滅ぼしなのだ。
それなのに差し出すものの無い空の器を海輝は唯一無二だと拾い上げた。
彼はその器を満たしたすことを望んだ。
残骸となった存在が、彼を生かしたのだと微笑んだ。
――ならば、海輝に対して錦が求める事は許されているのだ。
この男が求めた事と錦が許すことはパズルのピースのように型にはまった。
この温かな腕に抱かれる権利を。
この男に必要とされる自分を許しても良いのだ。
「世界で一番幸せだと白状したのさ。」
奇遇だね錦君。
僕もそうだよ。
相好を崩し笑う海輝の腕の中で、錦は 確かに欲しい物を手に入れたのだ。
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