89 / 90
【22】「最終回答」
「海輝。」
「うん?」
夏休み中、何度も時が止れば良いと思ったが今はもうそんな事感じない。
この男と作る思い出が未来へ向かい積み重なっていくのだ。
「本当にずっと一緒か。」
「うん。大学が始まれば戻らないといけないけど、僕の返る場所は君の隣だ。約束しよう。」
「海輝。」
「うん?」
「お帰りなさい。」
「ただいま。錦君。」
彼が返る場所は、錦の居る場所だ。
もう一度、「ただいま」と海輝が言うと胸が温かく満ちた。
微笑した錦を眩し気に見つめてくる。
背に回された腕に力が籠められる。
胸へ抱き込まれたので甘える様に額を摺り寄せた。
もう、夏休みが終わっても寂しくない。
カウントダウンの必要もない。
『僕がいる。だから君は幸せになる。 もしも僕の言葉が真実になったら君の言葉で答えて欲しい。』
夏休みが終わる頃に欲しい物を手に入れると彼は断言した。
錦はその言葉を嘲笑した。
何もいらない、欲しくないと跳ね除けたが――
『その時、君は幸せかどうか僕に教えて。』
海輝。
夏の終わりには何も望まないと言った俺は考え方を改める、お前はそう笑った。
答えなら、夏が終わるどころかお前と過ごした夏休み中ですでに出ている。
そして、今それを確信した。
見直しても修正の必要のない最終回答だ。
ともだちにシェアしよう!