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アオキ16
双丘の割れ目に宛がわれたのは彼の怒張だった。
太くて、熱くて、硬くて、そんな凶器のようなもので身体を貫かれたらどうなってしまうかわからない。
未知の快楽に怯え、反射的に腰が逃げうつ。
しかし、しっかりと掴まれ固定されてしまった。
アオキは小さく息を飲むと嘆息を吐いた。
今更嫌だと泣きわめいても聞き入れてもらえないだろう。
それならもう覚悟を決めるしかない。
紅鳶 のいきり立ったものの先端がアオキのひくつく後孔に押しあてられる。
肉壁を抉じ開けられる感覚にゾクゾクと官能が這い上がった。
さきほどまで散々指で弄られていたそこは紅鳶の切っ先をすんなりと飲み込んでいく。
「…あ…ううっ、あっ」
ゆっくり、ゆっくりと彼の男根がアオキの体内に侵入してくる。
……気持ちいい。
あまりの快楽にアオキは陶然となった。
アオキがセックスが苦手なのはこの行為のせいでもあった。
いつも客を相手にしているとき、この挿入時の違和感と異物感が苦手で身体が強張ってしまうのだ。
みずしらずの他人に中を掻き回され、深く探られる行為に嫌悪感のようなものを感じてまい、アオキの身体を貪るように腰を振る客をいつもどこか醒めた気持ちで見ていた。
それなのに、不思議と紅鳶にはそんな気持ちが全く沸いてこない。
彼が手練手管に長けた男だからだろうか。
それともゆうずい邸の男娼に抱かれれば皆アオキのようになるのだろうか。
多少の違和感や異物感はあるものの、そこに拒絶する気持ちは一切ない。
それどころか目一杯広げられた肉洞が彼の怒張を更に味わおうとうねうねと絡みつく。
すると突然腰を揺すられ、新たに訪れた快感にアオキは切なげに眉を顰めた。
「………あああっ……やあぁっ、ああぁあっ」
思いきり背中を仰け反らせ甘く悲鳴をあげると、背後から腕を引かれ上体を起こされる。
「あううっ…っ!!」
気がつくと脚を開かされ紅鳶の膝の上に抱え込まれていた。
「目を開けてみろ、全部見えるだろ」
背後から囁かれ、閉じていた目蓋をそっと開く。
すると正面の姿見にあられもない自分の痴態が映っているのが見えた。
開いた脚の間では快感に形を変えた陰茎が天を向き、その先端からはひっきり無しに蜜が溢れている。
そのすぐ下にある後孔からはぬぷぬぷと男根が行来し、アオキの慎ましい花襞を目一杯広げていた。
初めて見る自分が男を咥え込む姿に、身体中の血液が沸騰したかのように熱くなる。
目を逸らしてしまいたいのに、それができないのはアオキの肩口で真っ直ぐにこちらを見据える紅鳶に目を奪われてしまったからだ。
「セックスが嫌い?他の奴のように没頭できない?お前はただそうやって自分自身に言い聞かせて、感じないようにしてきただけだろ。それとも売られた事をいつまでも根に持って、身体を売る羽目になった自分を哀れとでも思っていたのか?」
紅鳶の言葉が針のように突き刺さる。
彼の言葉は的を得ていて反論しようと開いた唇はすぐに引き結ばれた。
また一つ自分の何かが剥がされていく。
何も言い返す事ができず黙っていると両膝の裏を持たれ、更に脚を開かされた。
アオキは自らの重みで彼の男根を深く咥え込む形になった。
深く腹を抉られ、衝撃で目の前が真っ白になった。
「…くぅ……んやああぁっ!!」
気がつくと股の間から蜜を噴き上げていた。
下腹部はひっきり無しに波打ち、全身は痺れきってじんじんと脈打っている。
前を触られていないのにまたイってしまった。
目の前にはいくつもの光がチカチカと点滅を繰り返している。
「またイったのか?淫乱な身体だ」
紅鳶が背後から妖しく囁きながら腰を揺すってくる。
「ちが……っ、あうっ……う…っ」
「まだ意地を張るつもりか?俺を締めつけて離さないくせに」
達したばかりの敏感な身体に思い知らせるように、ガツガツと腰が打ちつけられる。
揺れる屹立から露が迸り、上気した肌を濡らした。
「あん……ああっ、ああっ、あっ」
自分のものではないような甘い声が響き渡る。
姿見の中には全身を桃色に染め、快感に蕩けだらしのない表情をしている自分がいた。
「いい声が出るじゃないか、もっと感じてみろ」
「…ひっ、あああっ……いっ、あっ、あああんっ」
最奥を突かれて、一際高い悲鳴が上がる。
いつの間にか頭の中は気持ちいい事でいっぱいになっていた。
紅鳶の両手が尖りきった乳首を捏ね回してるのもたまらない。
奥を突き上げられるたび、粘膜を擦られるたびアオキの頑なな殻が一枚、また一枚と引き剥がされていく。
アオキが後生大事にしていた枷は、もはや何の意味ももたずただ足元に転がっていた。
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