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第13話

いつものホテルから出て、ジェニーちゃん達と別れた。 仲良くタクシーに乗る2人を見送ると、私はぐっと身体を伸ばす。 仮眠をしないと肌荒れしそうだなと思いつつ、私はスマホを取り出した。 「朝早くからごめんなさい?検査結果を見に行ってもいいかしら?」 電話の相手は早朝だと言うのにいつもと変わらない声で了承の意思を伝えてきた。 人の事は言えないが、あの子はいつ寝てるのかしらと通話を終了させながら思う。 私は迎えの連絡をしつつ大通りに移動をはじめた。 「クラブちゃんのラボまでお願い」 「はい」 大通りで待っていると、倶楽部の車がやってくる。 倶楽部の車には私達にしか分からないマークが記されていて間違えることはない。 私はその車に乗ると、行き先を告げる。 今日も運転手の子は違うが、きちんと目的地を告げると大きく頷いて車が走り出す。 「ありがとう」 目的地に到着すると、運転手の子は扉を開けてくれたので私は礼を言って建物の中へ入っていく。 建物の中は立派なロビーがあり、自然光が入ってきて朝独特の爽やかさがあった。 病院の様な内装のエリアを抜けて、研究棟を進んでいく。 トランプのマークのある研究室の前で止まって扉をノックする。 「どうぞ」 「朝からごめんなさいね」 部屋に入ると、倶楽部での事を想像できない位に机の上に書類などが山になっていた。 しかし研究室とはこんなものだろう。 前回行ったのが処置室だったのでこの研究室には来ていなかったのだが、久々に来ると自分の現役時代の机を思い出す。 どうしても研究書類や論文などがたまってしまうのだ。 私は手前のテーブルセットのソファーに腰かける。 「昨日、検査結果が出たってメール来てたから朝から来ちゃったわ」 「いえ。私も昨日は泊まりだったので気にしないで大丈夫ですよ」 「あんまり無理すると、体調崩すわよ?」 クラブちゃんが大きめの封筒を持ってデスクから離れてテーブルセットの方へ移動してくる。 そのまま私の前の椅子へ座って封筒を机に置いてこちらに寄越した。 クラブちゃんは疲れた様子が全く見えず、むしろ晴れやかな表情をしている。 「あら?思ったより疲れた様子は見えないけど、もしかして“お客様”かしら?」 「いえ。この前の方の素性の調査が終っただけですよ」 「それは良かったわねぇ」 「そうですね…暫く楽しめそうですし、あれは脳細胞を破壊する効果がありましたので外に戻さなくても問題ないでしょう。それに、友人も動いてくれるそうなので」 この前ユーノちゃんのお店から連れて来た子の素性の調査が終ったらしい。 しかも、あの子に使われた薬はかなり危険性の高いものだったらしく脳にも損傷を与えるものだったと聞こえた。 そうするとラボで実験材料になるのか、クラブちゃんが何処かへ渡してしまうのかは分からない。 うちの倶楽部ではナンバーなしにはそれなりの権限が与えられている。 その1つに、奴隷候補の処遇についてナンバーなしの一存で決めていいというのがあった。 しかし、それには色々と条件があって奴隷候補の身辺調査をすること。 奴隷候補の身辺整理をする場合は他のチームに依頼をしていいこと。 奴隷候補、奴隷には必ず倶楽部の目印を入れること。 などなど、色々と条件と言う名の決まり事があるのだ。 「あら。クラブちゃんのお友達は大変ねぇ」 「正確には、友人の親族が動くそうですけどね。ダイヤさんの患者さんも、もしかしたら居場所がなくなるかもしれませんね」 「私のお小遣いが無くなっちゃうのは寂しいわねぇ」 「ははは。ご冗談を…」 以前に、クラブちゃんのお友達がユーノちゃんのお店付近が“シマ”だと聞いていたので驚きはしなかったがお小遣いがなくなっちゃうのは寂しい。 そう思っての発言だったのに、クラブちゃんに失笑されてしまった。 私はお店とか色々あるから物要りなのに失礼しちゃうわ。 しかし、そんな事で反論もするつもりもないので私達は談笑しながらこの前の血液検査の結果を封筒から取り出す。 「まずまずかしらね?」 「今回は性病の方はいらっしゃいませんね」 数値を一枚づつ見ながら気になる物はじっくりと確認をする。 一応性病などの検査なのだが、色々な項目を検査してもらっている。 費用などはあの店から貰っているので私の懐は痛まない。 そういう所は、あの無礼な店長も弁えているらしく金はきちんと払うのだ。 私は結果に満足して席を立った。 コンコンッ 「どうぞ。それではお疲れ様です」 「ええ。ありがとうね」 私が席を立ったところで研究室の扉をノックする音が聞こえた。 クラブちゃんは許可の声を扉に向かって放つと、私に目礼をしする。 私もあえてクラブちゃんの名前を呼ばずに片手をあげて扉を内側から開けた。 すると、ドアの外に居た人物は私が出てきた事に驚いたのか動かない。 倶楽部の目印を探すが、そういった物が見つからないので一般の生徒かもしれないわね。 私は気にせずクラブちゃんの研究室を後にした。 「さぁ。私は家に帰って寝ようかしら」 私はまた建物の出入口に向かって歩き出す。 遠くでは隣接している学園の学校からチャイムが聞こえている。 私は窓から見える晴れた空を見上げながら誰も見ていないのを良いことに大きな欠伸をした。 「あらあら」 ユーノちゃんのお店に血液検査の結果を知らせに行ったところで、地下に新しい“お客様”が来たと連絡があったので様子を見に行くことにした。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…も゛う゛…ごわれう゛う゛ぅぅ」 「へばるには、まだ早いよぉ?」 「ひぃぃぃぃ、腕ぎぼぢぃぃぃ」 部屋に入ると男の断末魔にも近い声が聞こえてきた。 男のアナルには三月の腕がずっぽりと埋め込まれ、腹が不思議な形に変形している。 あそこまで行くと括約筋は切れているだろなどうでも良いことを思った。 「よかったな?お前もすぐに、ああなるんだぞ」 「むぐぅ!うううう!」 「あらこの子が新しい“お客様”かしら?結局スパイだったのねぇ」 男の寝かされているベットが見える位置に見たことのない男が口を塞がれた状態で座らさせられていた。 そういえば、スパイかもしれないと資料にあった男だったわね。 帽子屋がその男の肩に噛みついて血を舐めると男からは恐怖とも痛みから出たとも思える声がする。 男は恐怖と痛みでブルブルと震えていた。 「お前は俺好みに痛いのが好きなドMにかえてやるからな」 「うぐぅぅぅ」 「あの男もそんなに変わらないと思うけどねー」 楽しそうに今度は皮膚の柔らかい二の腕の裏側に噛みつきながら帽子屋が言っているけど、今三月に遊ばれてる男だって対して変わらないと思うが私はそれを口に出すのをやめた。 だって私が口にしたところで、地下室での全ての権限はお茶会のメンバーにあるんだもの。 「んぎぃぃ!!腕!もっとください゛い゛い゛」 「腕そんなに美味しいの?」 「ずぎぃぃぃ!!うでへ、おにゃか…ごんごんさりぇるとぉぉぉぉ!!あはま、あはまおかじぐなるぅぅぅ」 「あははは。もう充分おかしくなってるよぉ?」 三月がとびきりの笑顔で腕を押し込んでいる。 男のぺニスは肥大薬の“クッキー”のせいで肥大化しており、先端から止めどなく液体が溢れている。 ここまで行くともう日常生活に確実に支障が出そうね。 まぁ、ここに居る時点で普通の生活は送らせてもらえないでしょうけどね。 この男が地下室に来てから結構経ってるが、じっくり壊して行くからお茶会は長期間行われるだろう。 お茶会が無いときは地下室の住人達は上での雑用をしてるので、日々の鬱憤ではないがそれを晴らすために“お客様”にはとびきりのおもてなしをしちゃうのよね。 「また何かあったら連絡するわ!」 「あら?今日は“お客様”の紹介だけなの?」 「うううぅ」 帽子屋は新しいお客様の紹介をしたかっただけみたいで、遂に帽子屋の前の男は泣き出してしまった。 泣いたって末路は変わらないし、目の前に結果があるのにね。 「なら私は上に帰るわ」 「あぁ。皆に宜しく言っておいてくれよ」 私は片手を挙げて地下室を後にする。 地上に戻ると大きく息を吸い込む。 私はまだ地下室に堕ちたくはないわね。 そう思ってしまった事に自然と自嘲気味な笑いがこぼれる。 ここは変わったところだけれど、皆それぞれ楽しくやってるのよ。 これからお店でお仕事なの。 また時間があったらお話できると思うわ。 これからも、club Aliceをご贔屓に。 ご来店を心からお待ちしております。 END

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