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第8話

「さあ、ショーの始まりだ」  一度、手を大きく叩く。それを合図に、男たちが動いた。  智泰は、拘束されていた手足の縄を外された。恐怖に喘ぐ顔を見たいが、それよりも、ぶざまにペニスがぶち込まれるアヌスの様子が見たい。智泰を四つん這いにさせている彼らに、尻をこっちに向けさせろと命令した。  地面に並ぶ蟻の行列を、拾った小枝でぐちゃぐちゃに掻き乱す。 「うぅっ、ううっ」  悔しげに呻く声に、男たちの笑い声が重なった。何って心地よいハーモニーなのだろうか。  小枝をタクトのように振りながら、僕は立ちあがった。  智泰はペニスをしゃぶらせられていた。じゅぼ、じゅぼ、と鳴る卑猥な音が、次第と大きくなる。  智泰の後ろに立つ男が、彼のアヌスにペニスをこすり付け、狙いを定めている。僕は男のそばに行く。  接合部を上から覗き込むと、みちみちと音を立て、強制的に広げさせられるアヌスが見えた。アヌスの表面が、わずかに中へめくり込まれている。乱暴に突き進むペニスは、アヌスをぶちっと切った。接合部から血がこぼれる。 「はっ、ははっ、はははははは!! 気分は?」  ペニスをしゃぶらせられているのだ。尋ねたところで答えはない。わかっていても、僕は言う。聞く。何度でも、気分は? と。 「んぶぶっ、んぶっ、っ、っつぶぶぶっ」  腰を打ちつけられるたび、彼の背中の筋肉が、びくびくと蠢いた。そこを小枝で、ぎぎっと引っ掻く。 「っ、締めつけがやばい!」  ピストンを激しくさせ、男は言った。  まぶたが自然と細くなる。僕はその場にしゃがんだ。もしやと思い確認すれば、智泰のペニスは勃起していた。 「痛みが気持ちいいんだ? はっ。ペニスをしゃぶらせられ、ぶち込まれて……君こそ淫乱じゃあないか」  智泰の汚らしいペニスを、僕は強くはじく。 「んんっ、んんんっ、っうううっ!!」  くぐもった声に、艶が帯びた気がした。  顔面や体内に射精され、智泰はぶるぶると身体を震わせる。残る男からも次々と犯されて、彼は力なく地面に倒れ込む。その身体は精液や土にまみれ、いつも纏っている爽やかさなど微塵も残っていなかった。  男たちを下がらせ、全裸で仰向けに横たわる智泰の腹部を、僕は思いっきり蹴りあげた。 「げぇぇぇぇ」と、潰された蛙のような悲鳴を上げ、彼は腹を抱えて転げ回る。  仕上げだ。  僕はベルトのバックルを、わざと大きな音を立てて外す。ズボンと下着を膝まで下げ、地面に膝をつけた。智泰の両足を左右に大きく広げさせ、その間に入る。 「ほら、君の、大好きな、大好きな、僕のペニスだよ」  優しい声で囁けば、智泰は大粒の涙をぼろぼろとこぼす。真っ赤な顔や、震える身体は、怒りからくる反応なのか。それとも、屈辱を感じているのか。  挿入した途端、彼は身を捩った。ぐちゅり、と卑猥な音を響かせながら、アヌスがいやらしく蠢く。あれだけ乱暴に犯されたというのに、そこの締めつけはよかった。 「童貞をっ、くれてやるんだ! なぁ、嬉しいか。嬉しいだろ? これで君も僕と同じだ! 喜べよ!!」  がむしゃらに腰を打ちつければ、智泰の首が仰け反った。彼の表情は――蕩けきったような艶めかしさをしている。頭の中に、警報音が鳴った。  何かがおかしい気がする。何かが、奇妙だ。  智泰は唐突に、勢いよく吐精した。 「っ、あああっ、あっ、ああ……あき、秋人……っ」  明らかに悦びを示した声だ。壮絶な締めつけに、意識が持っていかれそうになる。睾丸がペニスの根元へ向かって上がりかけ、僕は歯を食いしばって、強い射精感を堪えた。  動きを止めると、智泰の手が背中に回ってきた。首を絞める気かと思ったのに、とても優しい手つきだった。 「やっと。やっとだ」  反吐が出そうだ。こいつの声を今、聞きたくない。  開いている唇にかぶりつく。再び腰を動かせば、智泰の喘ぎ声が口内に響いた。どんどん高くなるその声に、ピストンスピードがつられ、速まる。掴みあげている太ももへ、僕は強く爪を立てた。  智泰のペニスが頭をもたげてゆく。そのぶざまさに、笑いが込みあがってきた。  つんと尖っている乳首を、千切れろと願いながら、強くひねり上げる。  智泰が首を振った。 「ああっ!! イクっ、おまえのちんぽでイクっ!!」  カリのくびれに絡みついてくる肉襞が、ぎゅうと締まった。眩暈がするような絶頂感に耐えられなくなり、僕は射精してしまった。智泰の中が、全てをそこで飲み込もうとでもいうかのよう、きゅうきゅうに締まる。敏感になっているペニスをしごいてくる。  これはたまらない。乱暴にペニスを抜こうとしたら、腰を足でホールドされた。  智泰はまぶたを見開き、瞳を爛々と輝かせている。 「押して駄目なら、引いてみろって、っ、ははっ……。二年ほど前に、おまえが……受け入れてさえいれば、こうはならなかったんだ」  何を言っているのか、意味がわからない。 「やられっぱなしで……っ、ああっ、されるがまま、だったのに――」  赤い唇が、徐々に吊りあがってゆく。 「やっと、ここまで堕ちてきた。その手を、汚して。は、はは、はははっ、好きだと言っても、親友だよな、なんて返してきたおまえを手に入れた。あれほどゲイを嫌悪していたくせに、ガチガチにちんぽ勃たせて……っ、くはっ! ノンケの秋人を、ゲイの俺が手に入れた! これでもうおまえは……俺から」 「逃れられない」と呟きながら、智泰は唇を合わせてくる。  鈍器で頭を殴られたような気分だ。腰をいやらしく揺らされ、肉襞でぬちゃぬちゃにペニスを愛撫されて、僕のペニスはまた硬くなる。  いつの間にか、辺りは大分暗くなっていた。  周囲にいた男たちの気配が、気づけば消えていた。ビデオカメラや三脚も、なくなっている。  すさまじい悪寒が、背筋に上った。 「っ、くくくっ、くっははは! おまえっ、借金までして、ははっ! 探偵も、男たちも、俺がおまえよりさらに金を積んでやったんだ。はっ、はははははは!! 金は腐るほどあるからなぁ! すんなり手配できて、おかしいとはっ、思わなかった、のか……っ。あっ、ああっ、もっと。もっと俺を愛せ。愛せよ。中、もっとぐちゃぐちゃに掻き回せ……っ!」  淫猥さを曝け出した笑み。唇の端をいやらしく舐めながら、智泰は己の乳首を指で転がし始めた。  ああ、ああ、胸が嫌に跳ねる。何って奴だ。  アヌスは貪欲にひくつき、僕のペニスを愛撫してくる。  智泰の首をじわじわと絞めたら、彼の瞳の輝きが増した。 「僕は、絶対に君を愛さない」  嬉しそうに吊りあがる唇が「嘘こけよ」と、声にならぬ形を作る。  このまま殺してしまいたい。腹の底から灼熱の怒りが噴きあがる。それなのに――これ以上、手に力を入れられなくて。己の臆病さを思い知る。  首から手を退けると、彼は歪んだ笑みを浮かべた。 「ああ、気持ち、よかったのに……っ、殴って、煙草の火でも押しつけろよ、なぁ? されたこと、全てを俺に返して、それだけ執着していると、っ、見せつけてみろ」  喉仏を親指で撫でるその、癖。  抉るような強さで腰を打ちつけながら、僕は顔を顰める。 「結婚なんてさせるものか」  どこまでが嘘なのかわからなくても、そう吐き捨てないと気が済まない。 「おまえと逃げる準備は……っ、万端だ」  犬歯を舐めながらにやにやと笑うこいつを、必ず屈辱に喘がせてやる。僕の人生をかけることになろうとも必ず。必ずだ。  目の前が怨恨に染まる。  染まる。薄闇に、黒く。

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