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第7話

*  目に飛び込んできた街金で金を借り、智泰の身辺調査を探偵に依頼すると、彼に恨みを持つ人間はすぐに特定できた。  ああ、僕は、本当に愚かだった。さっさとこうしていればよかったんだ。こうなってみて、借金を背負うなど、まだましなことだと気づく。  残った金を使い、そいつら五人を雇った。  卒業式の帰りに、智泰を車で拉致し、鬱蒼としたこの森へ連れてくることは、拍子抜けするくらいに簡単だった。  智泰は、頭から黒いビニール袋を被せられ、がくがくと震えている。ぶっ、ぶぶぅ、と聞こえてくる呼吸音。  彼の整った顔立ちが、どんなふうに歪んでいるのかを見たくなり、僕はビニール袋を剥ぎ取った。  まぶたを限界まで見開いた智泰は、とても醜かった。涙どころか鼻水まで垂らしているし、猿轡が唾液でべたべたに汚れている。 「口はきけないだろうけれど、尋ねるよ。気分は?」  僕の姿を目にした途端、智泰は顔を顰めて低い唸り声を発した。  頬へ思い切り蹴りを入れれば、彼は情けなく地面に横たわり、後ろに集め縛られた手足を、虫のようにばたつかせる。 「気分は?」  もう一度聞いてみた。  問いに対する反応はない。  僕は煙草に火をつけた。最初のひとくちが一番うまいのだ。  煙草の味は、智泰から教わった。彼から学んだことは多い。  生い茂る木々の隙間をうまくすり抜けた夕焼けが、地面に差し込んでいる。赤く照らされた土を踏めば、笑いの渦が唐突に込みあがってきた。 「は、はははは、はははははははっ!!」  まぶたを大きく開いたまま、僕はけたたましく笑う。  智泰の顔が、奇妙に歪んだ。  三脚に固定したビデオカメラを、智泰へ向けさせた。男たちに顎で、やれ、と指図すると、彼らは嫌味を含んだ笑みを浮かべ、彼に襲い掛かってゆく。  打ち合わせ通り、ローションを使わせるつもりはない。  智泰の着ていたティーシャツは、引き千切られゴミと化す。  ナイフでズボンを切り裂かれ、智泰は「うぶぶぶぶっ」と鼻を鳴らした。 「豚め」  彼の頭上へ唾液を吐き捨て、目の前にしゃがむ。猿轡を外すと、智泰は咳き込んだ。 「唾液でむせた? はっ。ぶざまだ。汚らしい」 「秋人……っ、てめぇ」 「自分の状況がわかっていて、てめぇ呼ばわり? ああ、智泰。去勢してもいいんだ?」  まぶたを細め、やれ、とひとりの男へ命じる。仰向けにされた智泰は、股間を靴で軽く踏まれた。 「ひゃめっ、や、やめてくれっ!」  智泰は歯を鳴らしている。その音が耳に心地いい。ああ、楽しくて、胸が躍って仕方がない。 「まだ抵抗する?」 「しないっ、しないっ!!」  口から唾液の泡を吐きながら、智泰は叫ぶように言った。  数歩下がり、枝葉が落ちている地面に、僕は腰を下ろした。いつの間にか火の消えていた煙草を地面へ落とし、踏みつける。

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