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第13話
痛いほど伝わる気持ちに大神はそれ以上怒る気にもなれなかった。
「本当に困った魔法使いだな」
うつむいている柊のあごに手をかけると自分のほうを向かせた。潤んだ瞳が大神を映している。
「ずいぶんと長い間遠回りをしちゃいましたね。俺は柊先生に惚れているんです。あの時もそうだ。どうやらどんな状況でもあなたに恋をしてしまうみたいです」
あの時魔法をかけられていなければ、こうやって柊と再会することはかなわなかった。長い時間を生きていたから再会できた奇跡。そう考えるとこれはこれで悪くないような気がするから不思議だ。
「探してくれたんですか?」
「ええ。あなたが幼稚園に現れたときは本当にびっくりしました。僕のこと忘れていたけど、でもほっとした」
記憶はこれから取り戻させればいい、そう思ったと柊は言った。
コツンとおでこを合わせると柊は細く息を吐いて瞳を閉じた。
「僕のことを好きだと言って気持ちはまだ変わってない?」
天使だと思っていた魔法使いは愛らしい声で大神に愛を囁く。
「当たり前でしょ。何度忘れても会った瞬間好きになります」
耳に直接差し込むと柊は満足そうに目元を緩めた。
「それでこそ忠犬です」
犬かい!とガックリと肩を落としながらも腕の中にいる天使は自分のものなんだと嬉しくなった。この先の長い人生ならぬ魔物生も幸せに満ちているに違いない。
「知ってますか?」と大神は笑みを浮かべた。
「今日はハロウィンです。俺みたいなバケモノの気はものすごく立ってる。今すぐにでも獣化してしまいそうなくらいです。覚悟はできてますか?」
グイと高ぶる下半身を押し付けると、柊は小さく笑ってそれに応えた。
「僕だってバケモノの一種ですよ。あなたこそ覚悟はできてる?」
「上等だ」
自然と寄り添い、唇がふれあう。
魔物たちが闊歩するハロウィンの夜。壁にはワッサワサと喜びのしっぽを振りまくっている獣の影が映っていた。
fin
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