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第12話
パチパチと弾ける火を見ながら暖炉の前で語りあい、食事をした夜。抱き合って眠った夜。とろけるように一つに繋がって情愛をかわした夜。
「ともに過ごす時間が増えれば増えるほどそばにいてほしいと思った。でも人間の寿命はあまりにも短すぎて……だから思ったんです。魔法をかけてペットにしてしまえばずっと一緒にいられるんじゃないかって。記憶をなくしてしまったのは誤算でした」
ひょいと肩をすくめ、柊は困ったように笑った。
「まさか逃げてしまうとは思わなかった」
「だったらそう言ってくれればよかったじゃないですか」
狼にならなくても、ずっとそばにいるつもりだった。大神こそ柊から離れることは考えられなくなっていた。知っていれば意味も分からず、恐怖で逃げてしまわずに済んだかもしれないのに。
「そうですよね、僕は臆病だ。元気になったらあなたがいなくなってしまうんじゃないかと怖かった。そばにいてほしいと、うまく言いだせなくて卑怯なことをしてしまった。ちゃんと話すつもりだったんです、でも記憶をなくしたあなたは怯えて逃げてしまった」
逃げ出して当然だろう。そんなこと、夢にも思わない。優しい柊が魔法使いだなんて考えてもいなかった。大神は弱々しく首を振った。
「だからって……」
「そうですよね。いくら探しても見つからなくて、絶望を味わった時に思いました。あなたの気持ちも考えず勝手に進めたからこんなことになってしまったんだって。人間じゃなくなって一人さまよっている姿を思うとつらかった。早く見つけなきゃって、ずっと探していました」
ごめんなさい。と柊は頭を下げた。
「あなたを不幸にしたかったわけじゃない」
柊の抱えていた絶望を思う。大神以上に長い間孤独だった毎日に突然現れたまぶしい光。きっと救いを求めてしまったのだろう。
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