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第11話

「うそですよね……? からかって……ます、よね?」 「そう思いますか?」  うそをついているとは思っていなかった。柊の言葉の一つ一つが大神の閉ざしていた扉を開いていく。大神は震える声で知りたかったことを問いかけた。 「なんで……なんで俺を狼に変えたんですか?」  遠い昔大神は山で道に迷ったことがある。深い霧に飲み込まれ何度も足を踏み外し、瀕死の状態でさまよった森の中で見つけた一軒の家。そこにいたのは確かに、柊だ。全部思い出した。 『道に迷ってしまいました。助けてください』  カラカラにかすれた声で頼んだ大神に柊は温かく手を差し伸べてくれたのだ。 『それは大変だ。ゆっくり休んでいきなさい』  重傷を負っていたというのにあの時の大神も柊に一目ぼれをした。なぜ山奥に一人きりでこんな美しい人が住んでいるのかと疑問にも思わず。一人ぼっちだと言う柊に憐れみを抱いた。ずっとそばにいてあげたいとさえ思ってしまった。 「最初から俺をどうにかしてやろうって思っていたんですか?」  手厚い看護のおかげで日に日に元気になっていく大神を悲しそうに見つめていた柊を思い出した。あの夜が人間としての最後の日だった。  あの日々が嘘だったなんて思いたくない。 「そうじゃない……言ったじゃないですか。さみしかったからですよ。あなたが来て、一緒に過ごして楽しくて……もう一人にはなりたくなかった。さみしいのはもう嫌だった」  柊は憐みを含んだ視線を大神に向けた。 「ついてなかったですよね。僕好みの姿で現れたあなたが悪いんですよ。それに僕を欲しいと言ってくれた。一人で寂しい長い時の間、そんなことを言ってくれる人は誰もいなかった。すごく嬉しかった。___あなたのことを好きだと思ってしまった」

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