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第10話

「まだ思い出せませんか?」  低く責めるような声色。 「思い出す、って」 「狼になった日のこと」  突然のセリフにサーっと血の気が失せていく。今なんて言ったんだ? 狼になった日のこと? 「なんです、か……それ……」  声がかすれていた。何を言っている? 何が起きている?  大神の動揺を鼻で笑うと、柊は囁いた。 「あの日も満月の少し後で、今日みたいな日でしたよね」  もう一方の手を大神の髪に伸ばし、耳が出てくる場所をトントンと叩いた。 「僕と甘い夜を過ごしたじゃないですか。 それも忘れちゃった?」  天使のように柔らかく笑いながら柊は顔を近づける。鼻と鼻が触れそうなくらいの距離。 「人のこと散々抱いておきながら突然いなくなるなんて酷くないですか? 躾しなきゃダメですかね」 「え? 柊、先生?」 「さっきの物語、あれはあなたのお話でしょう? 途中でなにか思い出したんじゃないですか?」  この人は何を言っているのか。でもあの日感じた恐怖がもう一度大神を襲っていた。本能でわかる。この人に近づいたらヤバイ。逃げなきゃ。  だけど壁に括りつけられた体はすくんで動けなく、柊の視線にからめとられている。 「探したんですよ、よく上手に人間の姿を保てるようになりましたね」 「え、ちょっと待って……それって、」  意味が分からなかった。探していたって? 柊先生が大神に魔法をかけた本人だって?

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