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第1話

 表の仕事、裏の仕事の激務をこなし、須藤は自宅であるマンションへと戻る。早く恋人である佑月の顔が見たいと、玄関のドアさえも煩わしいとばかりに急くように中へと入る。  リビングへ向かった須藤だったが、目的の人物が直ぐに見つからず少し落胆した。 「……もう寝たのか?」  時刻は午後11時過ぎ。鞄をソファに置いた須藤は、真っ先に佑月の部屋へと向かった。〝 ノック〟等という礼儀など須藤には皆無で、いきなりドアを開けてしまう。これで何度も佑月に怒られているのだが、須藤にはノックをする意義が見いだせず、無視をしている。  この高級マンションは須藤のものであり、佑月も自分のもの。そんな考えの男ゆえに、時に佑月から傲慢だと文句を言われるのだ。  文句を言われようとも、須藤という男はそう簡単に自身を改めることはしない。のだが、佑月が本気で怒っていることが分かると、さすがに須藤も折れることがある。  なんだかんだで佑月から見離される事が一番須藤にとっては堪えるのだ。  居ると思われた佑月がおらず、須藤の眉間のシワがどんどん深くなっていく。直ぐに斜め前にある須藤の主寝室のドアを開けたがここにもいない。  トイレにも入っている気配はなく、シャワルームも覗くがそこも無人で、さすがに須藤は心配になってきた。 「佑月。おい、いるなら返事しろ」  一度見た部屋を須藤はもう一度見て回るが、やはり何処にも佑月はいない。  

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