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第3話

「だって俺はヴァンパイアだから」 「ヴァン……?」  一体何を言ってるんだと、須藤は目の前で牙を覗かせ笑う恋人を凝視した。  やけに精巧に出来ている牙。まるで本物のようでさえあり、須藤は触れたくなって手を伸ばしたが佑月に避けられてしまう。 「ヴァンパイア! 知らない?」 「いや……知ってるが」  とここで須藤は今日が10月31日だと合点がいく。都内でも数日前からお祭り騒ぎ状態だと新聞で目にした。実際須藤の持つCLUB数店舗も、イベントの際は積極的に取り入れている店がある。そういった事は全てオーナー店長に任せているため、須藤からはよっぽどの事がない限りは何か文句をつけることはない。  そして目の前の恋人もヴァンパイアなるものに仮装しているわけだと、須藤もようやく納得した。 「お兄さん、とてもいい匂いがする。顔も身体もめちゃくちゃ好みだし」  佑月らしからぬ言葉だが、これもヴァンパイアとやらになりきっているせいだと思えば可愛くて仕方ない。  ならキスをさせろと須藤はヴァンパイアに迫った。

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