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第5話
すると突然佑月が須藤の首筋に腕を回し、須藤を引き寄せ舌を絡めてきた。積極的と言えば積極的なのだが、切れた傷にばかり舌を這わせ啜っている。
さすがの須藤も待ったをかけるように佑月を引き剥がすが、何処にそんな力があるのかと問いたい程に、普段の佑月では考えられないパワーがあった。
「あーん……なんで? もっと吸わせて」
恍惚とした表情を浮かべつつも、中断させられたことに佑月は至極不満そうだ。
「そんな真似事までしなくていいだろ」
あやす様に佑月の頬に指を滑らした須藤だったが、赤の虹彩が先程よりも濃くなっている事に気付き、須藤は眉を顰める。
「真似事? 俺はヴァンパイアなのに変な事言うんだね」
もっと早く、いや直ぐに気付くべきだった。
同じ顔、同じ声だが、話し方から所作が全く違うというのに。佑月とは似て非なる者。いくら佑月を欲していたからといって、愛する佑月を間違えたことに須藤は深い自己嫌悪に陥る。
そして怒りをぶつけるように、須藤はヴァンパイアを突き飛ばすと、素早く懐から銃を取り出し、化け物へと向ける。
「そんな〝おもちゃ〟俺には効かないよ? それよりやっぱりお兄さんの血とっても美味しいからもっと頂戴よ」
「っ……」
瞬きをした瞬間とも言える一瞬。身を躱す間もなく、須藤の首筋にはヴァンパイアの牙が埋め込まれていた。
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