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Ⅰ 守りたい④

江戸城 本丸御殿 ここは、警備が二重三重に張り巡らされている政務の中枢だ。 刺客が入り込む隙はない。 漆黒の衣を口に当てて、薄い笑みを浮かべている男 『取り憑いているんだよ、この男に』 本当に、彼は死神? だから今、俺の目の前に存在している? 『連れていくぞ』 「待て」 ゆらり 奇妙な浮遊感に包まれて…… うそ 体は漆黒の衣を擦り抜けた。 存在しているけれど、存在しない姿 男は本物の死神だ。 『取り憑いた者の魂を奪うのが死神だ』 そんなの嫌だ! 兄上を奪わせない。 「だったら」 『ならば』 「俺に」 『お前に』 「取り憑け!!」 『取り憑く!!』

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