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Ⅱ 背徳遊戯 ①

下肢が疼く。 右手で昂りを包んでぎゅっと握ると、甘い快楽が電流になって腰に走る。 もっと、もっと…… 体が欲してしまう。 「こんなのっ」 嫌なのに。 ハァハァハァ 自慰がやめられない。 こんなの、俺じゃない。 『お前だよ』 声がクスリと笑った。 「ちがうっ」 『違わない』 首を振って否定するけれど、肉棒をこする右手を止められない。 あぅ、気持ちいい…… 『淫乱』 ドクンッ 欲が膨れ上がった。先端から垂れた透明な汁を竿全体にこすり付ける。 手に馴染んだカチカチの熱がもっと、もっととせがんでくる。 クチュクチュ、チュクチュク 淫靡な水音と荒い呼吸の音が、鼓膜を犯す。 隣で眠っている兄上 秀麗な顔を映した視界が、じわりと滲む。 綺麗に整えられた寝具 枕元には徳川代々の御神刀が飾られていて。 真っ白い布団に包まれて、兄上が眠っている。 寝顔さえも気品を携えて。 その横で、俺は乱れて自慰にふける。 ごめんなさい。 兄上の部屋で、自慰なんて…… しちゃいけないのに。 『興奮してるんだろ』 「なっ」 『手の中で小さな雄がヒクヒクしている』 「お前のせいだろっ」 『そう、全部俺のせい』 俺は、死神 死神ゆえに現世の肉体がないから、お前に触れられない。 『だから、お前は自慰をして……』 死神は取り憑いた者を支配する。 『俺を楽しませろ』 死神の命令には逆らえない。 絶対遵守の理だ。 『お前だって楽しんでいるんだろう?俺の命令で仕方なく兄の部屋で……って言い訳して。 本当は嬉しくて仕方ないんだろ』 「なに言って!」 『シコるのやめられないくせに』 「あはんっ、イイー!」 トピュウ 先走りが溢れた。 「もっとー、もっと気持ちよくなりたいー!はぅん」 俺の声だ。 俺の口が…… 「貴様ッ、なにをした!」 『素直じゃないから、素直になってもらおうか?』 半顔を隠した右手の下で、フッと口角が吊り上がる。 『取り憑いた人間を、俺の思い通りに喋らせる事ができる』 死神の能力だ。 『でも、これって。お前の本音だよな?』

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