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Ⅳ 光②

……『正解だ』 声が、どこからともなく聞こえた。 投げつけたら筈の柄が、いつの間にか俺の右手に戻っている。 御神刀が輝く。 刀身がないのに…… 光が刀の峰を象る。 この光は亡霊だ。 ケルトの悪霊が御神刀に吸収されて、刀身の光が闇を照らす。 『徳川家御神刀《葵》』 漆黒の翼が輝いている。 まるで刀に共鳴するように。 『刀身はない。持ち主の声を得て守護する重代の宝剣だ』 守りたい……と願った俺に、刀が答えた。 『《葵》を使役できるのは、徳川の血の力《アヲイ》を受け継ぐ者のみ』 刀がうなる。 ケルトの悪霊を吸収する。 俺が兄上を守っている。 ねぇ、なんで? どうして、お前が知ってるんだ。 俺も知らない、徳川の御神刀の秘密を…… お前が、どうして 死神なのに。 死神だから? 只の死神じゃない。 お前は、一体…… 『吸収した悪霊を浄化する装置が必要だ』 浄化が為されなければ、御神刀は妖刀と化す。 かつて徳川当主に仇なした妖刀・村正のように。 命を(あや)め、命を喰らい尽くす刀になる。 民を守る徳川が、民の血をすする…… そんな日ノ本にしてはいけないよ……… 兄上が囁いた気がした。 『《葵》の浄化装置は……』 「やめろッ」 本能が叫んでいた。 やめてくれ! 俺はもう失いたくない。 兄上のように。 眠らないでくれ。 そばにいてくれ。 お前を失いたくない! 『俺だ』

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