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Ⅳ 光①

「兄上!」 眠る兄上の体に覆い被さる。 「せめて、あなただけでも」 あなたを守りたい 刀に手を伸ばす。 兄上の枕元 徳川家の御神刀 お願い!守って。 お祖父様 徳川のご先祖様 漆の黒鞘を抜いた。 「……………………どうして」 脇差しは、徳川の御神刀じゃないのか? 刀身が無い。 御神刀は偽物 「そんな……」 俺は兄上を守れない。 兄上も、城下の皆も 家臣も 皆いなくなる。 ケルトの霧に飲まれて、 悪霊に連れ去られて、 みんな、みんな 居なくなる…… ねぇ、あの時繋いだ手の温もりも、もう…… 忘れてしまうんだ。 兄上と俺 駆け回って 手を握って、危ないぞ。……って、ぎゅっとされて。 遊び疲れた俺を、兄上がおんぶしてくれた。 転んで、足、怪我して泣いたら、 男だろ。……って お前は俺と一緒に日ノ本の民を守らなくちゃいけないんだぞ。……って 泣き止んで立ち上がったら、偉いぞ。って…… 頭ぽんぽんしてくれた。 兄上の手の温もりを、もうすぐ俺は忘れる。 兄上も俺も、黒い霧に包まれて、死者の国に旅立つんだ。 俺が消える。 世界から、消える。 兄上は皆から忘れられてしまうの? 俺も、皆が消えたら。 あなたを知る存在が、此の世からいなくなるという事 あなたの存在そのものが、消える。 嫌だ。 消したくない。 忘れたくない。 兄上を 兄上の温かさを、 兄上の優しさを、 あなたの手の温もりを 忘れるなんて嫌だ!! こんなのなくたって 徳川の御神刀なんかに頼らない。 こんなのなくたって 俺があなたを消させない。 あなたは、俺が 「兄上!」 俺が、あなたを 「兄上を守るんだ!!」

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