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Ⅲ 闇②

風が吹く。 禍々しい風だ。 ハロウィンの日には悪魔が降りる。 ケルトの亡霊が、悪霊を連れて世界に降臨する。 この世に(わざわい)()かれる、災厄の日 人が倒れていく 城下の民が 武士が 警備の者達が一人残らず気を失う。 禍々しい黒い霧が、世界を飲み込む。 意識はやがて此の世を離れ、悪霊達により幽世(かくりよ)に連れ去られる。 二度と戻って来られない、死者の国 悪霊の祭典 ハロウィン 倒れた人間の魂魄(こんぱく)は、もうすぐ肉体から隔離されるだろう…… 子供も、大人も、老人も 男も、女も 全員 世界から居なくなる。 ……「約束じゃないか。俺に取り憑いたら兄上を助けてくれるんじゃなかったのか」 ……「江戸の皆まで、なぜ」 お前は奪うのかッ 人を、命を すべて 全部 摘み取るのか 摘み取ってしまうのか 略奪するのか 蹂躙するのか 『俺は死神だ』 漆黒の羽が開く。 闇を浮かべて。 硝子玉の奥に、闇が沈む。 『信じたお前が悪い』 この世界を喰うのが死神だ。 『お前達が望んだのだろう』 ケルトを引き入れたのは、日ノ本の民だ。 お前達はケルトの悪霊を引き入れたのだ。 無知を悔いろ! 『お前達が望んだ終焉だ』

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