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Ⅲ 闇①
俺は見たんだ。
醒めていく意識の中で、彼の背中に羽が生えるのを……
夜の馨 りがした。
深い深い、闇色の翼
羽が視界を覆った。
体と同じで、触れる事のできない羽が柔らかな風をそよいで。
俺の目を覆う。
泣くな……
羽は言った。
泣かしたの、お前だろ。
俺を泣かせたいんだろ。
虐めて、辱しめて
なのに
どうして?
お前は羽で、俺を抱くんだ?
触れる事のできない、優しい羽で。
お前が嫌い
大嫌い
大嫌いなお前の羽が俺を包む。
俺の涙を拭う。
だから……
俺は泣いた。
泣き止まない。
いくら、お前の命令だからって。
涙が止まらないんだ。
なぜ?
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