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Ⅴ そこにいる①

チュッ 濡れた頬をあたたかな体温がそっと触れた。 それは濡れた感触で…… 唇!? ハッとして振り返るけれど、視界が白に包まれてしまう。 柔らかな、羽のように優しく…… 力強い腕が俺を抱きしめていた。 「…………あにうえ」 俺を包む腕が頷くように慈しむ。 「兄上」 温もりが俺を離してくれない。 ……「一人にしない」 半年振りに聞いた兄上の声 取り憑いていた死神が消えたから、兄上が目覚めた。 「違うな」 髪に触れた吐息が、クスリ 笑った気がした。 「俺が死神で、死神が俺だ」

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