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第1話
俺と翔真が付き合い始めた夏の夜。
あの夜から、三ヶ月近くが経とうとしていた。
「ンッ、あっ、ひあぁ……ッ」
グチュグチュと嫌らしい音を立てて、二本の指が肛内を掻き回す。
突き入れられて。引き戻されて、また奥まで。
翔真の指が出入りするたび、抑えきれない声が洩れる。
「あッ!そこっ、やだっ……」
俺はビクビクと腰を跳ねさせた。
俺のナカの感じるトコロ。
「嫌じゃないだろ、瑞希。すっげぇ気持ち良さそうだけど?」
撫でるように擦られて、快感で息がつまる。
「言う、なっ……て。アッ、アアッ……」
俺はビクビクと体を震わせて昇りつめた。
翔真が俺の膝裏を抱えあげて、俺のナカに挿入 ってくる。
後ろで快感を覚え始めても、俺は慣れずにいた。
いくら解 されても、閉じたソコを圧倒的な力で抉じ開けられる感触は……。
「瑞希、力抜けって」
力を抜けって言われても、うまくできない。
翔真を受け入れたい気持ちとは裏腹に。体はぎこちなく強張るばかりで。
いつもは優しいくせに、エッチの時、翔真は強引で譲らなかった。
葛藤はある。なんで俺だけ脚を拡げて。こんな恥ずかしい格好をしなきゃいけないのかとか。
男の身で受けなきゃいけないこと。尻の穴を拡げられて受け入れる準備をしたり。いつも羞恥と戸惑いがつきまとっている。
でも、誰かにこんな風に求められるなんてなかったから、それは嬉しいって思うんだ。
「日曜日、空手の試合があるんだ。見にこないか?」
中間テストも終わり、ホッと一息ついていた10月の下旬、翔真に誘われた。
「え?行ってもいいのか?」
「ああ。交流会みたいな小さな大会だけどな。師匠に言われて断れなくて。俺は特別に型の披露もさせてもらうんだ」
「型の披露?すごいじゃん。行く」
「で、それが終わったら遊園地に行こう。ちょうどハロウィンのイベントがあるんだ」
「ハロウィン?へぇ、そうなんだ」
遊園地もハロウィンのイベントも、一人じゃ絶対に行かない場所だ。
こういうのってデートかな?デートだよな。
顔が緩みそうになるのを我慢する。
「良かった。誘ってみて。男同士で遊園地とか引かれるかと思ったけど」
「ううん。楽しみにしてる」
翔真に誘われると嬉しい。
男同士でも好きな以上はデートしたい。というより、一緒にいたい。
練習なら何度か見たことあるけど、翔真の試合や型を本格的に見るのは初めてだった。
翔真のことだ。カッコいいに違いない。
俺は急に日曜日が待ち遠しくなった。
翔真と待ち合わせ、バスで移動する。
試合会場の体育館に到着した。
「俺、応援してるから。頑張れよ」
「瑞希に言われると気合いが入るな。頑張るよ」
翔真は照れくさそうに笑った。
翔真は着替えのために更衣室に向かい、俺は二階の階段を上がって応援席に座る。
しばらく待つと、翔真が場内に入ってきた。
いくつも声援が飛ぶ。
フロアの真ん中に立つと一礼し、翔真の型が始まった。
俊敏に突き出される拳。軽やかな足捌き。スピードのあるキレのいい動き。極みの美しさ。呼吸音。
翔真は力強く堂々としていた。
演武に見惚れる。
型の披露が終わり、翔真は観客から盛大な拍手を受けていた。
続いて組み手試合になった。
翔真はヘッドギアと空手用のグローブをつけて試合に臨んだ。
フットワークの軽さ。攻めるスピード。繰り出す突きの速さ。上段の蹴り。流れるような連続技の数々。
試合はすべて翔真の圧勝で終わり、高校生部門で優勝した。
俺は自分のことみたいに嬉しかった。
翔真が着替えを終えて、ロビーに戻ってくる。
「お疲れ、翔真。優勝おめでとう」
「サンキュー」
その時、一人の女の子が翔真に声をかけてきた。
「翔真くん?久しぶり」
「おっ、美穂じゃん。久しぶり」
「懐かしいな~」
すっごく可愛い女の子だ。
翔真と並んでもひけをとらない。というか美男美女って感じで映える。
俺には「お似合いのカップル」に見えた。
二人は楽しそうに話している。
ズキッと胸の辺りが嫌な感じに疼いた。
俺は無意識のうちに、二人から距離を置いていた。
離れた場所で翔真を待つ。
女の子の表情が急に悲しげに曇った。何かを切々と訴えている。
翔真は真摯に対応しているみたいだった。
俺のところまで二人の会話は聞こえてこない。
でも、ただならぬ雰囲気なのは何となく伝わってくる。
何を話してるんだろう?
やがて、女の子は涙を拭うと、翔真に笑顔を残して去っていった。
「待たせたな、瑞希」
翔真が近づいてくる。
いつもの翔真と変わらない。
俺はホッとしていた。
でも、何かが俺の中で、抜けないトゲみたいに引っかかった。
今の可愛い子は誰?
もしかして、翔真の……。
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