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第5話
していいよって、僕は背を向けたままうなずいた。怖いけど、いいよ。亮ちゃんならいい。
「ちゃんと、やりかた調べたし。大丈夫だからな、聡」
そう言って、亮平は指を抜き、何か滑 るものを付けて、僕の体の、これから亮平とひとつになろうってとこに、そうっと塗った。指でゆっくり慣らされる。痛くないように。
それもすごく気持ちよくて、僕は何度もイキそうになった。
ああ、やだ! 恥ずかしいよ。後ろで気持ちいいなんて。指入れられて悶えてる自分がつらい。気持ちいいのに、つらい。
でも段々、そんな気持ちも蕩けて消えて、僕は真っ赤になって亮平に抱かれてた。
「真っ赤っ赤だな、聡。ニンジンみたい」
顔も体も真っ赤っ赤に紅潮してる僕の肩に噛み付いてきて、もうキスだけのロミオじゃない、狼人間になった亮平が、自分の服をゆるめてるのを背中に感じた。
「入れるよ、聡。力抜いてな」
「あ、待って……待……」
恥ずかしくて、思わず止める僕の制止の声を亮ちゃんは聞かず、うつ伏せにして足を開かせた僕の中に入ってきた。ゆっくり沈み込む。その押し開かれる感覚に、もう声とも言えない熱い声が出た。
あああ……。
すごいよう亮ちゃん。僕、こんなの初めて。こんな気持ち。
がくがく震えて、全身から汗が流れて、喘ぐ息も止まらない。白いラグの長い毛足を掴んで、僕はおとなしく亮ちゃんに食べられた。ゆっくり入れて、奥まで。その底をつく感じが来るまで、亮平は僕を逃さず、しっかり捕まえて食べた。
「亮ちゃん……すごい……よ」
なんて言っていいかわからず、悶え苦しみながら僕は教えた。
僕の中、亮ちゃんでいっぱいだよ。もう入らない。誰も他に、君の他には誰も、僕の中には入る余地がなくて、今になるまでずっと、亮ちゃんは僕の全部だったの。それを思い知るのが怖かっただけ。
もう離さないで。僕も君を離さないと思う。だってもう、離れられそうにない。
「動いていい……?」
亮ちゃんが僕に確かめ、頷くと、亮ちゃんが責めた。お互い初めてで……初めてだよね? たぶん初めてで、どことなく危なっかしい、夢中の行為。
気持ち良かったり、怖かったり。押し寄せてくる亮ちゃんの熱に震えて、それでかき回されて、僕もう無理だった。我慢できないよ!
「亮ちゃん、い、イク……いく」
僕が振り向いて泣くと、亮平は深く頷いてた。イっていいよって。
「好き、亮ちゃん。ずっと好きだった」
「馬鹿。俺もだよ。もう我慢できない」
そうだよね。僕も。でもドレスどうしよう。着たままでいいの?
馬鹿みたいなことを気にしてたわけだ。亮ちゃんは馬鹿って恥ずかしそうに言って、僕のためにティッシュを山盛り取ってくれた。そこまで要らないよ。
でもありがとう。その白い花束並みので亮ちゃんに包んでもらって、僕もう無理だった。我慢できないよ。
いっぱい漏らして泣いて、亮ちゃんにキスしてもらった。そしてそのまま亮平もイッてた。僕の中で。
僕の中で⁉︎
まあいいか……幸せ……。
はあはあ甘い息をして、僕と亮ちゃんはずっと繋がったまま抱き合ってた。服も脱いでないし、次は裸でしたいな。何にも邪魔されない体で、ぎゅうって抱き合って、好きだって言ってくれ亮ちゃん。僕のこと好きだったの?
「聡……お前、次は模試でA判定とれよ。泊まり込みでシゴいてやる」
「えっ」
亮ちゃんが急に言うんで、びっくりした。受験前カウントダウン時期の、泊まり込み猛勉強だった。
えっ泊まるの⁉︎
僕の親もいいよって言った。亮平のパパとママも。特に亮ちゃんのお父さんは、聡くんも将来は弁護士になってうちの事務所で働いてくれよって。亮平のこと支えてやってくれなって、言ってた。
おじさん。いつから? それいつから思ってたんですか?
僕は亮ちゃんとお風呂に入り、一緒に寝た。
成績は意外にもどんどん上がり、亮ちゃんは僕と泊まり込みでも勉強の手を抜くような、ゆるい男じゃなかった。
志望校には見事合格。亮ちゃんももちろん、合格した。入学式では新入生総代だ。すごいな、亮ちゃんもはいつも。僕が馬鹿なのか?
その式辞を読む格好いい後ろ姿をうっとり見る僕は、確かに馬鹿だった。亮ちゃんにめろめろ。
よく合格できたなと思う。
でもそのお陰で、僕と亮ちゃんはあと四年はセットでいられる。
この先の人生もずっと、できたらずっと亮ちゃんとセットでいたいな。
僕はそう思い、そう言うと亮平は笑った。入学式の後の桜の咲く新しい部屋への帰り道。
僕らはそこで一緒に住むことにしたんだ。何でって、だって亮ちゃんに僕の苦手なほうれん草を食べてもらわないといけないしね?
そして僕の大好きなニンジンは僕が食べ、亮ちゃんは、大好きなニンジンみたいな僕を食べるんだって。
ワーオ! ハッピーハロウィン。お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ。
僕らの幸せの魔法はもうしばらく続きそうです。
――おわり――
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